総務省初の"出戻り官僚"が誕生、霞が関の危機感 キャリアの退職相次ぎ、人事改革に試行錯誤

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その点、平松室長のように役人としての蓄積があり、官民の違いもわかる管理職は貴重な存在ともいえる。総務省の柴山官房参事官は「役所では、経験や知識が重要。細かい知識や制度はすぐに覚えられないので、即戦力としてのプレミアがある。民間の知恵も還元してほしい」と期待する。

もっとも、初めてとなる採用の試みなだけに、待遇面は手探りだ。2000年に入省した平松室長の同期の多くは今、課長となっている。しかし出戻り第1号の平松室長は、課長よりも格下に当たる室長級での再スタートとなった。

本人は「戻ってきて急にみんなと同じだと目立って嫌だから、課長では戻りたくなかった」と納得感を示すが、復帰後の待遇のあり方は、出戻りを検討する人たちにとって重要な判断材料の1つとなる。退職者が戻りやすい体制を作るには、民間での勤務経験が評価されるような人事制度の検討も課題となりそうだ。

10人に1人のキャリア官僚が5年未満で退職

霞が関全体でみても、人材の流動化は止まらない。中でも若いキャリア官僚の退職者が際立つ。

キャリア官僚の在職年数別退職者数

キャリア官僚の採用は毎年、700人前後だ。人事院がキャリアに絞って行った調査では、2020年度に退職した在職10年未満の官僚は109人で、2013年度(76人)よりも33人増えたことが判明。在職5年未満の退職者率は、2016年度採用者で10%と、2013年度採用者(5.1%)よりも4.9ポイント上昇する結果となった。

10人に1人のキャリア官僚が、就職後5年未満で辞めている計算となる。

退職予備軍も多い。内閣人事局が国家公務員を対象に2022年度に行ったアンケートでは、非管理職のうち、「3年程度のうち/1年以内に辞めたい」「すでに辞める準備中」と回答した人は、30歳未満で男性が11.4%、女性が9.4%、30代で男性が6.1%、女性が7.6%だった。

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