蜜月終焉、フィリピン正・副大統領間で大抗争勃発 マルコスとドゥテルテ、大統領選から一転、対立激化
「大統領、これは悪魔の合意だ」との公式声明を出し、その後もCPPとNDFを「裏切り者」「欺く者」「暴力的な敵」と罵倒し、地域社会に大混乱をもたらすと警告した。和平交渉は大統領だった父が2017年11月に打ち切っていた。
ICC対応で堪忍袋の緒が切れた
不協和音が響くなか、国際刑事裁判所(ICC)をめぐるボンボン氏の発言でドゥテルテ陣営の堪忍袋の緒が切れた。ICCは前政権の「麻薬撲滅戦争」が「人道に対する罪」などにあたるとの告発を受け、捜査を続けている。
政府発表だけでも「戦争」にからんで6000人以上が殺され、その多くは司法の手続きを経ない超法規的殺人だった。ICCは前大統領や側近だったデラロサ国家警察長官(現上院議員)らが「大量虐殺」に関与した疑いをもち、逮捕状の発布も検討しているとされる。
前政権は捜査に反発し、2018年にICCに脱退を通告、1年後に正式に脱退した。ところがボンボン氏は2023年11月、ICCへの再加入を「検討する」と発言したのだ。
大統領選でサラ氏が候補の座をボンボン氏に譲った裏には、ICCへの非協力が最低限の合意だったとみられ、ボンボン氏はICCの国内捜査には協力しないとの姿勢を崩してはいない。
それでもサラ氏の「中間選挙立候補発言」の翌1月23日、「国内捜査は主権侵害となる」として協力しないと話したものの、捜査員の入国自体に関しては「一般人としてフィリピンを訪れることは可能だ」との見解を示した。
デラロサ議員が記者会見し、ボンボン氏から2週間前にICCの捜査員は入国させないと伝えられたとしたうえで、「男らしく本当のことを言ってくれ。私たちを収監させたいと思っているなら直接言うべきだ」と訴えた。
麻薬戦争に対し、現政権は明らかに姿勢を変化させている。レムリア司法相は2024年1月、共同通信の取材に対し、麻薬戦争について「摘発のノルマを割り当てられた警察が証拠をでっち上げ、多くの無実の人が逮捕された」と批判し、「過ち」と断じた。
ボンボン・ロムアルデス陣営は、ICC捜査をドゥテルテ陣営牽制のカードとしているのではないかという疑心暗鬼がドゥテルテ側で強くなっている。
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