蜜月終焉、フィリピン正・副大統領間で大抗争勃発 マルコスとドゥテルテ、大統領選から一転、対立激化

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亀裂が初めて公となったのは選挙1年後の2023年5月だった。下院の上級副議長だったグロリア・アロヨ元大統領が一般の副議長に降格された。

アロヨ氏は、ロムアルデス議長を追い落とす院内クーデターを企てたことが露見し返り討ちにあったとの見方が広がるなか、アロヨ氏と親しいサラ氏は所属政党ラカス-CMDを離党した。同党のトップはロムアルデス議長。アロヨ氏の処遇に反発しての離党だった。

ボンボン+下院議長VSドゥテルテ陣営の構図

ロムアルデス氏はサラ氏に対抗して次期大統領の座を狙っているとされ、ドゥテルテ陣営との対立があらわになっている。ボンボン氏自身はサラ氏やアロヨ氏らとあからさまに敵対する姿を見せてはいないが、サラ氏よりロムアルデス氏との連携に重きを置き、政権運営の中軸に据えていることは明らかだ。

ドゥテルテ対ロムアルデスとの確執は、2024年度政府予算案からサラ氏率いる副大統領府と教育省が要求した計6億5000万ペソ(約17億円)の機密費を下院が削除したことで隠せぬものとなった。

安全保障に関係のない副大統領府や教育省が過去、機密費を受け取ったことがないことや、サラ氏が前年、大統領府の予算から割譲された1億2500億ペソ(約3億3000万円)の機密費をわずか11日間で費消したことが明らかになり、野党やメディアから批判が高まったことを受けた措置だった。

しかし、サラ氏は「平和と秩序のために割り当てられた資金(機密費)を攻撃する者は陰湿な動機を持っている。国民の敵だ」などと反発した。父のドゥテルテ氏もテレビで「下院は腐っている。ロムアルデスを監査しろ」と吠えたことで、さらに世間の注目が集まった。

サラ氏は政権運営でさまざまな不満をためていたとみられるが、自らが参加する政権への表立った批判は避けていた。ところが政府が2023年11月28日、フィリピン共産党(CPP)の統一戦線組織、民族民主戦線(NDF)との間で和平交渉を再開すると決めたことで、怒りが爆発した。

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