フィリピンとの「準同盟」は日本の国益にかなうか アメリカに押され前のめりの日本、リスクへの覚悟は

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フィリピンのマルコス大統領と会談する岸田文雄首相(写真・共同)

首相の外遊といえば、訪問先への手土産がつきものだ。途上国に対しては巨額の経済協力。ところが今回のフィリピン行きは様相が違った。東シナ海や南シナ海でともに中国の圧力を受ける「同志国」として、「準同盟」への関係格上げが最重点のテーマだった。

アメリカに背中を押される形で日本が前のめりで進める防衛協力には相応のリスクが伴うが、危機時の対応をどこまで検討しているのか、国民の目には定かでない。

準同盟で初の隣国、そして途上国

岸田文雄首相は2023年11月3日、首相就任後初めてフィリピンを訪問し、マルコス大統領との会談で、自衛隊とフィリピン軍が共同訓練をする際の入国手続きなどを簡略化する「円滑化協定」(RAA)締結へ向けて正式交渉に入ることで合意した。

さらに日本が「同志国」に軍の装備品などを無償提供する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」の枠組みで初めて、沿岸監視レーダー(6億円相当)を贈与することを決めた。

マルコス大統領は首脳会談後の共同記者発表で、「両国は同じ分野で安全保障上の懸念に直面している」としてOSAの枠組みを歓迎し、地域の平和と安定への貢献に期待を表明した。

続いて岸田首相は「東シナ海、南シナ海の状況に対する深刻な懸念を共有した」と指摘したうえで「力による一方的な現状変更の試みは容認できない」と語った。双方とも中国を念頭に置いた発言であることは明らかだった。

準同盟化の根拠は円滑化協定である。共同訓練や災害支援で相手国を訪れる際の査証取得や機材持ち込み手続きなどを簡略化する。裁判権の所在や公務中の事故に対する請求権の放棄などについても定める。

日本はこれまでにイギリスとオーストラリアとの間で円滑化協定を結んでおり、フィリピンは3カ国目となる。

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