フィリピンとの「準同盟」は日本の国益にかなうか アメリカに押され前のめりの日本、リスクへの覚悟は
他の2カ国と違う点がある。フィリピンは隣国であり、途上国であることだ。イギリスとオーストラリアは、もちろんOSAの支援対象ではない。
フィリピン軍の関係者が共同演習などで日本に入国する際にRAAの対象となることはあるだろうが、協定はもっぱら自衛隊がフィリピンでアメリカ軍などと演習をする際を想定しているとみられる。
準同盟と言っても、日米安保条約で同盟関係にあるアメリカはもとより、英豪とも違って、日本が有事に巻き込まれた際の軍事的支援をフィリピンに期待しているわけではあるまい。
中国船に衝突された巡視船は日本提供
フィリピンは目下、南シナ海(西フィリピン海)で領有権を争う中国と厳しい緊張状態にある。
フィリピンは排他的経済水域(EEZ)内にあるアユンギン礁に老朽軍艦を意図的に座礁させ、海兵隊員を駐留させて実効支配の拠点としているが、同艦への補給を試みるたびに中国海警局や海上民兵からの妨害が最近エスカレートしている。
2023年10月22日には、フィリピン海軍がチャーターした補給船に中国海警局の大型巡視船が衝突、続いて補給船の警備にあたっていたフィリピン沿岸警備隊(PCG)の巡視船に中国の海上民兵船が衝突した。映像ではいずれも中国側が当てにきているように見える。
衝突された巡視船「BRPカブラ」は日本政府の政府開発援助(ODA)により日本で建造された44メートル級の艦船だ。
巡視船供与のきっかけは、2012年4月にフィリピン・ルソン島沖わずか230キロメートルにある中沙諸島スカボロー礁付近で起きた中国とフィリピンのせめぎあいだった。EEZ内で違法操業していた中国漁船をフィリピン海軍の艦船が臨検したところ、中国海警局の巡視船が割って入って睨み合いとなった。
1カ月にわたる膠着状態のなか、応援の船が続々と駆けつける中国に対し、フィリピン側は補給で現場を離れざるをえなくなった。以後、同礁付近は中国側が実行支配している。
この事態を受けて、当時のアキノ政権は2つのアクションを起こした。1つは翌2013年1月、南シナ海のほぼ全域の領有権を主張する中国の九段線(現在は十段線を主張)は「国際法に反する」として、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に提訴した。ドゥテルテ前政権に代わった2016年7月、全面勝訴の判決を得た。
もう1つは沿岸警備隊の強化だ。当時PCGに配備された巡視艇は4隻に過ぎなかった。そこで頼ったのが「価値観外交」や「自由と繁栄の弧」を唱える日本政府だった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら