蜜月終焉、フィリピン正・副大統領間で大抗争勃発 マルコスとドゥテルテ、大統領選から一転、対立激化

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2022年の正副大統領選が始まる前の世論調査でサラ氏は一貫して大統領候補の首位に立っていた。にもかかわらずボンボン氏に大統領候補の座を譲る形で「ユニチーム」として副大統領選に回った。

南部ミンダナオのドゥテルテ家と、北部ルソン島イロコス地域、中部ビサヤ地区レイテ島を地盤とするマルコス家という「地域割り」が功を奏したこともあり、両者の圧勝につながった。

大統領に三行半?

サラ氏は2024年1月22日、ダバオで集会に参加し、2025年5月に予定されている中間選挙に立候補すると発言した。副大統領の任期は6年。出馬のためには任期半ばで職を辞す必要がある。

中間選挙は正副大統領を除く、上院の半数と下院の全議席、知事、市長らのポストが一斉に争われる。サラ氏が出馬するとすれば上下院か、前職のダバオ市長である。

鞍替えの理由として、サラ氏は兄の下院議員パオロ氏、弟のダバオ市長セバスチャン氏がともに再選をめざさないようだからだと説明した。しかし額面通りに受け取る向きはまずいなかった。

選挙にまつわる食言はドゥテルテ親子のお家芸だ。前大統領は選挙前、「大統領選に出るなら死んだほうがマシ」と語ったり、前回の大統領選では娘に対抗して副大統領選に出馬すると表明したりした。サラ氏も副大統領選に立候補する前にいったんダバオ市長への立候補を届け出ていた。

実際、今回も発言2日後の1月24日に「発言が断片的に解釈された」と副大統領職の辞任を否定した。発言の意図は「なんなら辞めてやる」というボンボン氏へ牽制が目的だったと推測される。

ボンボン氏は「水の流れを読む(観測気球をあげる)ためでは」と論評したが、実際は大統領への三行半、あるいは決裂宣言だった可能性もある。

フィリピンの正副大統領はアメリカと違ってペアで選ばれるわけではなく、別々の選挙で選ばれる。このため過去ほとんどの場合、就任後の正副大統領は対立し、副大統領は重要な役割を与えられなかった。

しかしボンボン氏とサラ氏の場合、選挙戦の経緯や両家の関係から結束は固いとみられていた。ところが蜜月の終わりは予想より早く訪れた。就任から1年足らずで、両者の関係に暗雲が漂い出す。

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