アサヒが撤退「ストロング系」はなぜ広がったのか 「健全で持続可能な飲酒文化」は負け惜しみの感も

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ただ、ストロング系の歴史は「ストロングゼロ」から始まるわけではない。RTD市場では2001年からキリンが「氷結」シリーズを缶チューハイとしてヒットさせていた。発売当初のアルコール度数は3〜5%程度だったが、2008年に「氷結 ストロング」というアルコール度数8%の「ストロング系」のハシリとなる缶チューハイの発売を開始。

そして2009年、サントリーはアルコール度数8%の「ストロングゼロ」を発表。折しもリーマンショックとデフレの時期と重なり、同社は「1本で十分酔えること」を目指して、2014年には度数を9%に変更。ちなみに、その前年の2013年にはキリンも「氷結 ストロング」のアルコール度数を8%から9%に変えている。

80年代には8%の缶チューハイが登場していた

こうして、熾烈なストロング系の覇権争いの火蓋が切り落とされたわけだが、さらに歴史をさかのぼれば、1984年に誕生した日本初の缶チューハイである宝酒造の「タカラcanチューハイ」は発売当初から、アルコール度数は8%だった。さらに、その前年の1983年に、サントリーは「タコハイ」という最近復活した甲類焼酎を炭酸で割った代物を出しており、本商品もアルコール度数は7%だった。

つまり、RTDタイプの缶チューハイは誕生当初から、すでにストロングだったわけである。そのため、2010年代に急にアルコール度数9%の"凶悪な酒"が誕生したわけではない。

とはいえ、アルコール度数が1%上がるだけでも、飲む側の「すぐに酔える」という期待感は高められるのだろう。

そんな、消費者たちのニーズに応えようとしたのか、2018年にはサンガリアからアルコール度数12%の「SUPER STRONG」が登場。しかし、「多分エタノールってこんな味なんだろうな」(編注:あくまで筆者の主観です。エタノールは実際には入っていません)と思わせるようなアルコールの濃さと、販売経路がローソンとポプラの2社に限られていたことなどから、早々と市場から姿を消してしまった。

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