アサヒが撤退「ストロング系」はなぜ広がったのか 「健全で持続可能な飲酒文化」は負け惜しみの感も

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調査会社インテージによると、「ハイボールを含む缶酎ハイ市場はコロナ下で拡大し、23年は5333億円だった。そのうち度数8%以上の商品は25%程度を占める。17年の40%強からは大きく減少したものの、需要は根強い」という(販売金額ベース)。

現在のストロング系の代表的な商品は冒頭でも紹介したサントリーの「ストロングゼロ」、コカ・コーラの「檸檬堂」、キリンの「氷結 ストロング」だが、アサヒもこれまで「ハイリキ9」「スパークス」「もぎたて」「ウィルキンソン・ハード」など、さまざまなストロング系を世に出してきた(2020年末時点で79品目)。

「もぎたて」シリーズは他社製品よりも甘く、これはあくまで筆者の印象だが、酒というよりも、グミを液状化させた駄菓子のような味だった(編注:あくまで筆者の主観です)。それゆえ、数あるストロング系の中でも「甘口」好きのユーザーからの人気はあったものの、競合他社には太刀打ちできず、気づけばコンビニやスーパーの陳列棚から消えてしまっていた。

ストロング系を含むRTD市場の勝ち残りというのは、それぐらい熾烈なのである。

2017年にはNHKが危険性を報じる

ところで、調査会社インテージによる「缶チューハイ市場に占める高アルコール商品の割合」が、今より4割もあった2017年というのは、NHKの『ニュースウォッチ9』で”ストロング系缶チューハイ”の危険性が報じられた年でもある。

当時、数あるストロング系の中でもサントリーの「ストロングゼロ」は一大勢力になっており、インターネット上では「ストロングゼロ文学」やいらすとやのキャラクターがストロングゼロを飲んで、あらゆる不安から逃れる画像がミーム化してしまい、ストロング系は「飲む福祉」などと話題になった。

さらに、2018年末には芥川賞作家の金原ひとみ氏が文芸誌『新潮』(新潮社)で、厳しい現実から逃れるために、アルコール度数9%の缶チューハイ「ストロング」に依存していく女性編集者を描いた短編小説『ストロングゼロ』を発表している。

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