精神医療の現場で感じるストロング系のヤバさ 精神科医の松本俊彦氏が感じる危機感とは?

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精神科医の松本俊彦氏は「依存症を専門とする精神科医師の間では、『ストロング系はヤバい』という認識が以前からあった」と話す(記者撮影)
「ストロングZEROは『危険ドラッグ』として規制したほうがよいのではないか。半ば本気でそう思うことがよくあります」
2019年の大晦日。このような書き出しで始まる投稿をある医師がフェイスブックで行った。その後、この発言はネットを中心に波紋を広げることになる。
投稿者は、国立精神・神経医療研究センター病院の薬物依存症センター長を務める松本俊彦氏。過激とも受け取れる発言をしたのはなぜか。インタビューをしたところ、背景にあったのは精神医療の臨床現場で感じる危機感だった。

エチルアルコールは依存性薬物

――ストロング系酎ハイを危険ドラッグとみなす発言は、ネットニュースでも大きく報じられ話題になりました。酒類メーカーの反論などありましたか。

メーカーからクレームを受けると思っておびえていたが、それはなかった。まあ、放っておけということなのだろう。

一方、同業である精神科医たちからは、「そうだよね」と同意してくれる声が多かった。依存症を専門とする精神科医師の間では、「ストロング系はヤバい」という認識が以前からあった。ストロング系が登場してから、患者の酔い方がおかしくなってきていると臨床現場では感じている。

家庭の問題や不安定な雇用環境などが原因で生きづらさを抱えている人たちは、お酒を楽しむために飲んでいるのではなく、つらい気持ちを紛らわすため、意識を飛ばすために飲む。しんどい1日が終わった後、自分へのご褒美として飲んで気を失って、そしてトラブルを起こす。

酩酊した状態でコントロールが効かなくなり、リストカットの傷を深く入れてしまう女の子もいる。しらふだったらそこまで切らないのに、ざくざくと切ってしまって大騒ぎを起こす。精神科臨床の現場では、そういう事例をすごく見るようになった。

――先生の専門は薬物依存の治療です。それなのにアルコールの問題に声を上げたのはなぜですか。

覚醒剤などの薬物使用をがんばって断ち切っても、使いたいという欲求はやはり出てくる。そのときに「お酒ならいいだろう。薬物ではないのだから」と、酒に移行する人が一定数いる。

「酔っ払って訳がわからなくなれば薬物への欲求もなくなる」と思って一生懸命飲む。だけど、本当に訳がわからなくなって、売人に連絡を取ってしまい気づいたら注射器が腕に刺さっていました、というような人が結構いる。このようなケースは、ストロング系が出てきてから多くなったと感じる。

酒に含まれるエチルアルコールは、れっきとした依存性薬物。極端な言い方になるが、エチルアルコールは依存性という点で大麻よりもはるかに危ないと思っている。

東洋経済プラスの短期連載「ストロング系チューハイの是非」では、この記事の続きを無料でお読みいただけます。小説『ストロングゼロ』を執筆した金原ひとみさんのインタビューなど、5本の記事を配信しています。
①精神科医・松本俊彦氏「精神医療の現場で感じるストロング系のヤバさ」
②小説家・金原ひとみさん「『ストロング』は人を魅惑する罪深き飲み物」
③オリオンビール社長・早瀬京鋳氏「度数9%の商品を売ることに罪悪感を抱いた」
④データで見る!「ストロング系チューハイ」いちばん飲む世代は?
⑤「ストロング系悪玉論」にメーカーはどう答える?
兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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