精神医療の現場で感じるストロング系のヤバさ 精神科医の松本俊彦氏が感じる危機感とは?
エチルアルコールは依存性薬物
――ストロング系酎ハイを危険ドラッグとみなす発言は、ネットニュースでも大きく報じられ話題になりました。酒類メーカーの反論などありましたか。
メーカーからクレームを受けると思っておびえていたが、それはなかった。まあ、放っておけということなのだろう。
一方、同業である精神科医たちからは、「そうだよね」と同意してくれる声が多かった。依存症を専門とする精神科医師の間では、「ストロング系はヤバい」という認識が以前からあった。ストロング系が登場してから、患者の酔い方がおかしくなってきていると臨床現場では感じている。
家庭の問題や不安定な雇用環境などが原因で生きづらさを抱えている人たちは、お酒を楽しむために飲んでいるのではなく、つらい気持ちを紛らわすため、意識を飛ばすために飲む。しんどい1日が終わった後、自分へのご褒美として飲んで気を失って、そしてトラブルを起こす。
酩酊した状態でコントロールが効かなくなり、リストカットの傷を深く入れてしまう女の子もいる。しらふだったらそこまで切らないのに、ざくざくと切ってしまって大騒ぎを起こす。精神科臨床の現場では、そういう事例をすごく見るようになった。
――先生の専門は薬物依存の治療です。それなのにアルコールの問題に声を上げたのはなぜですか。
覚醒剤などの薬物使用をがんばって断ち切っても、使いたいという欲求はやはり出てくる。そのときに「お酒ならいいだろう。薬物ではないのだから」と、酒に移行する人が一定数いる。
「酔っ払って訳がわからなくなれば薬物への欲求もなくなる」と思って一生懸命飲む。だけど、本当に訳がわからなくなって、売人に連絡を取ってしまい気づいたら注射器が腕に刺さっていました、というような人が結構いる。このようなケースは、ストロング系が出てきてから多くなったと感じる。
酒に含まれるエチルアルコールは、れっきとした依存性薬物。極端な言い方になるが、エチルアルコールは依存性という点で大麻よりもはるかに危ないと思っている。
①精神科医・松本俊彦氏「精神医療の現場で感じるストロング系のヤバさ」
②小説家・金原ひとみさん「『ストロング』は人を魅惑する罪深き飲み物」
③オリオンビール社長・早瀬京鋳氏「度数9%の商品を売ることに罪悪感を抱いた」
④データで見る!「ストロング系チューハイ」いちばん飲む世代は?
⑤「ストロング系悪玉論」にメーカーはどう答える?
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