インボイスが経理以外も「ひとごと」ではない理由 対応次第で業務負担・税負担の大きさが変わる
通常、インボイスとして扱われるのは請求書や領収書だ。しかしまれに納品書がインボイスとなるケースもあり、営業担当者などは取引先とのやりとりで注意が必要となる。
これまで売り手側は日本の慣行として、納品書ごとに消費税額などの端数処理(小数点以下を丸めること)を行って売掛金を計上し、月末締めで該当月分の請求書を作成するという作業が行われてきた。
しかしインボイス制度ではこの端数処理について、1つのインボイスにつき税率(8%か10%)ごとに1回、とするルールがある。1カ月のうちに10回納品し、納品書を10回出す場合、従来のように納品書を作るたびに端数処理を行うとルール違反となってしまう。
ルール通りに計算するには、納品書の金額を単純に合算するのではなく、請求書内で端数処理を再計算する必要があるため、売り手側はシステム改修にコストがかかる。大規模な会社では、既存のシステム対応が間に合わないなどの弊害も起きうる。
買い手は納品書をかき集める必要性も
その対応策として想定されるのが、納品書をインボイスとして扱い、請求書はとりまとめの書類として扱うパターンだ。ただしこの場合、請求書に記載される金額は納品書の金額の単純合算となってインボイスのルールに反するため、請求書の末尾に「これはインボイスではありません」などと注意書きを記載することになる。
売り手側にとっては、帳簿に計上された売掛金の金額と入金額が一致するので、計算も楽だろう。一方で買い手側は、月末締めの請求書で会計処理を行えばいいものが、その裏に大量の納品書がある場合、それらをすべて集める必要がある。
全国展開しているレンタカー会社と契約しているケースを一例に挙げてみよう。各地域で利用されるたびに営業マンには個別の明細書が手渡され、月末に本社から1枚にまとめた請求書が送られてくる。しかしこの請求書がインボイスにはなっておらず、個別の明細書がインボイスであれば、各地域の営業マンから明細書を集めなければならない。
「インボイスではない」という注意書きがどこに書いてあるのか見つけづらいこともあり、申請者もよくわからない状態のまま、請求書を提出してくるケースも想定される。個別の明細書や納品書を探し直す手間を防ぐためにも、請求書がインボイスの条件を満たしているか、現場社員が日頃から確認する意識付けが重要となる。
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