プレゼンに「流行りネタ」を入れるとスベる理由 ボケたがりな人が知っておくべき科学的知見

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使う言葉が、あなたの社会的地位を決める

さらに言えば、皆さんはその使った言葉によって自らの社会的地位を決めてしまっている、ということも知っておかなければならない。

・ワシはまだまだ元気じゃよ。
・お紅茶をお飲みになれば宜しいんじゃなくて?
・フッ、笑止な。貴様、どこから来た?

皆さんは上記の3つの文章をみて、それぞれ、どんな人物が話しているのか、イメージできるだろうか? 最初の「ワシは~」は、おじいさん。「お紅茶」はお嬢様。「フッ、笑止な」は、少年漫画に出てくるような筋骨隆々の戦士を、イメージしたはずである。

これは言語学の世界で「役割語」と呼ばれる、大変重要な発見である。同じことを意味する言葉は無数にあるなかで、物語の書き手は固有の言語セットを用いて、そのキャラクター像を特定する。実際の老人は「ワシ」などとは言わない。だが、「ワシ」という言葉を使うことで、書き手も読者もこの人物が老人であると認識するのである。

役割語は、私たちの日常でもいたるところで見られる。

・スキームを構築してステークホルダーのコンセンサスを得る
・利益分配構造を決め、各事業者からの承認手続きを進める
・この仕組みでみんなに納得してもらう

同じことを表現したとして、人によってかくも使う言葉は違ってくる。そして、その言葉を聞いた人々は、ああこの人はコンサルなんだなとか、お役所の人だなとか、辣腕のオーナー社長なんだなと、人物像をクリアにしていくのである。

だとすれば、皆さんが「ちょっと古い小ネタ」を使ったり、「若い人の流行り言葉を知っている」感を出したとすれば、それは何をもたらすだろうか。少なくとも、聞き手にとってあなたの人物像構築にプラスに寄与することはほとんどない。むしろ、せっかくのプレゼンも台無しになるくらい、深刻なダメージを与える可能性すらあることを、皆さんは理解できるのではないだろうか。

かくして、私はプレゼン中に流行りものの小ネタを挟むのを禁忌としている。プレゼンは、本筋の内容勝負。しょうもないところで、自らの評点を下げるような行為は、避けるようにされたい。

中川 功一 経営学者、やさしいビジネスラボ代表取締役

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なかがわ こういち / Koichi Nakagawa

1982年生まれ。2004年東京大学経済学部卒業。08年同大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。大阪大学大学院経済学研究科准教授などを経て独立。現在、株式会社やさしいビジネスラボ代表取締役、オンライン経営スクール「やさしいビジネススクール」学長。専門は経営戦略、イノベーション・マネジメント。「アカデミーの力を社会に」を使命とし、経営スクールを軸に、研修・講演、コンサルティング、書籍や内外のジャーナルへの執筆など、多方面にわたって経営知識の研究・普及に尽力している。YouTubeチャンネル「中川先生のやさしいビジネス研究」では、経営学の基本講義とともに、最新の時事解説のコンテンツを配信。

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