プレゼンに「流行りネタ」を入れるとスベる理由 ボケたがりな人が知っておくべき科学的知見
それでは、こちらはどうか。京都生まれ・京都在住の友人の家に遊びに行き、3時間ほど歓談する時間を過ごして、友人から一言。「そろそろコーヒーでも飲まはりますか?」。さあ、皆さんならどう行動するだろうか?
B. そろそろお暇をします、といって立ち上がる
いかがだろうか。恐らくは……皆さんは、正答できたのではないかと思う。最初の問題の正解はA。「押すなよ」という友人は、押してもらいたがっているのだ。2問目の正解はB。京都人の友人は、ぼちぼちお帰りを、と促している。
これを、言語学の世界では「意味と意図のズレ」という。人間は、その長い歴史の中で言葉遊びを覚え、ほんとうに意図することとは異なる意味を言葉に込め、その文脈を共有できることを文化や教養、あるいは娯楽として享受するのである。
たとえば同じ問題を、アメリカ人、中国人、ドイツ人に出したとして、正解を当てられるかはかなり危うくなる。文脈を、共有できていないからだ。
そう、ある言葉の「正しい意図」(話し手が本当に込めているメッセージ)が伝わるのは、話し手と聞き手が同じ文脈を共有できているときに限られるのである。
果たして何人が「倍返し」を理解できるか
皆さんが会議の場で唐突に「倍返しだ!」と叫んだとする。最高視聴率30%を超えた近年の大ヒットドラマだ。さあ、何が起こるだろうか。
皆さんはここで気づくべきなのだ。視聴率が仮に30%あったとしても、それはつまり、これがネタだと理解しているひとはせいぜい30%やそこらしかいないということなのだ、ということを。その他大勢にとっては、あなたが決然たる意志をもって「倍返し」を宣言したようにしか見えていないのである。
「いつやるの?」と聞き手に問いかけて、「今でしょ!」と返事してもらえることを期待してはいけない。「なぁぜなぁぜ」と問いかけても、それが流行の若者言葉だと理解している人はごくまれで、大半の人はおちょくられているとしか感じない。「wwww」とか「草」と表現して、それが笑いを表現しているとも一般の人は知らないのだ。
プレゼンは、最大多数の人に、ただしく情報を伝達し、その心をも動かすことを狙いとして行うものである。1対1ならいざ知らず、プレゼンの場面で、理解できる人を選ぶ言葉を使うのは、あってはならないのである。
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