日本と米国「テック企業」ロビイング活動に見る差 日本企業は求められている事を読む力に長ける

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米国テック企業からすれば、日本で展開しているサービスは独自のものではなく、グローバルに共通していることが多いため、日本のメディアや政策立案者からの評価を得るため、日本だけのために第三者からなる有識者委員会を設置するというのは容易なことではない。

このように当然ながら、日本のテック企業は、日本の政策立案者が何を求めているのかを“読む力”に長けているので、米国のテック企業の中には日本のテック企業のやり方に学びを感じているところもある。

一方で、米国テック企業のほうに分があるという面もある。

例えば、日本政府からやや首をかしげたくなるような政策提案があった際には、米国テック企業の場合には、米国や欧州などから同種の政策動向に関する情報を取り寄せ、国際的な視点から見ていかに日本政府の提案が珍妙なものであるのかを論じていくのは得意とするところである。

そういう意味では、両者が、それぞれの得意不得意分野をカバーしつつ、良い連携ができているのではないかと思う。ちなみに日本には中国のテック企業も進出しているが、私は中国のテック企業の公共政策チームと連携するメリットを感じることはなかったので、その経験はない。

それぞれの国の環境に合わせて組織運営

最後に、米国テック企業の公共政策チームと一口に言っても、同じ行動パターンを取る訳ではないことも付言しておきたい。幸い、アマゾンはリアルな物品を取り扱うリテールビジネスやマーケットプレイスを主たる事業としているので、ビジネス上の商談もロビイング活動も進出しているそれぞれの国の政治・経済・社会環境に合わせた行動ができるような組織運営がされている。

公共政策チームで言えば、日本の法制度や政策立案過程に精通した専門家が日本法人の関係部署と相談しながら行動していく。

もちろん、米国本社からの大きなガイダンスを仰ぎ、他国の公共政策チームの同僚と連携することもあるが、米国本社がマイクロマネジメントをする訳ではないし、ましてやアジア太平洋地域(APAC)における地域本部は存在していなかった。

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