日本と米国「テック企業」ロビイング活動に見る差 日本企業は求められている事を読む力に長ける

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ただ、米国テック企業の中には、ロビイングの一挙手一投足に米国本社やAPAC地域本部からの介入が生じる企業もある。

このような場合には、あいにく日本法人の公共政策チームには委任された権限が少なく、米国本社やAPAC地域本部と日本の政策立案者との間の伝書鳩のような役割に徹することにもなる。

「ハイレベル面談こそ最良の解決策」という妄信

米国本社やAPAC地域本部の幹部がわざわざ来日して直接意見陳述したとしても、日本の政策立案者が何を求めているのかを”読む力”に乏しいので、その意見が関係者に響かないままになってしまうこともある。

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また、米国本社やAPAC地域本部の幹部は、日本の政策立案プロセスを熟知していないため、首相や大臣などのハイレベルの面談にむやみに拘泥することもしばしば起こる。

最近の例で言えば、生成AIやWeb3.0のように与党が大きな政策の方向性を霞が関に先んじてリードしている分野であれば、閣僚や与党幹部に面会を申し入れることは一定の意義があると思うが、そうでない分野についてトップ外交を申し入れても日本の場合はあまり意味がない。

にもかかわらず、外資系企業の中には、日本を一部のアジア諸国と同様にとらえて、ハイレベルな面会こそが最良の解決策であると妄信している本社や地域本部の幹部もいる。

渡辺 弘美 元アマゾンジャパン合同会社顧問・渉外本部長

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わたなべ ひろみ / Hiromi Watanabe

世界中のAmazonで最古参のロビイスト。東京工業大学物理学科卒業後、1987年通商産業省(現・経済産業省)に入省し長年にわたりIT政策に従事。2004年から3年間日本貿易振興機構(ジェトロ)及び情報処理推進機構(IPA)ニューヨークセンターでIT分野の調査を担当。2008年にAmazonに転職。15年間にわたり日本における公共政策の責任者を務めた。24年に公共政策業務をアップグレードするアナリーゼ合同会社を設立し代表に就任。著書に『ウェブを変える10の破壊的トレンド』(ソフトバンククリエイティブ)、共著に『セカンドライフ創世記』(インプレス)がある。

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