脳梗塞の老人を大移動させたツアーナースの苦悩 後遺症で言葉が話せない84歳男性の長距離移動

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中島さんは、東京の総合病院から、娘である清美さんの住む滋賀県の療養型病院に移ることになった。

ツアーに同行するのは「日本ツアーナースセンター」の髙橋博美看護師だ。事前に東京側の病院の医療ソーシャルワーカーが、患者やその家族からの相談を受け、入院中の病棟や日本ツアーナースセンターでアセスメントを行う看護師、転院先の病院などとの調整を行った。

ツアーナース
タクシーの中で眠った中島さんは、新幹線の中では元気な表情をしていた(写真はケアミックス提供)

髙橋看護師は次のように語る。

「診療情報提供書と看護サマリーを見ると、中島さんは、医療依存度がかなり高い方であることがわかります。どんな症状なのか、想像しながら、ツアー当日の準備を進めます」

ツアーナースの特殊性

ここで少しだけ、ツアーナースの特殊な事情について説明する。

病気や障害がある方、医療や介護が必要な方の外出や旅行などに付き添って、安全で快適な旅を支えるのがツアーナースの仕事だ。

医療保険や介護保険などの公的サービスではなく、保険外サービスとなり、国内外の旅行や転院、冠婚葬祭への付き添いなど、1人ひとりのニーズにあったオーダーメイド型の看護師付き添いサービスだ。豊富な選択肢が提供されることへの期待は大きい。

そして仕事の性質上、通常の看護師とは違った悩みと苦労がある。

病院、介護施設などで活躍している看護師たちであれば、通院や入院、通所や入居を通じて顔を合わせることも少なくない。日常的に接しているので、その人の症状や治療経過、性格、家族との関係もある程度把握している。そのために、不測の事態が起こった場合も、すぐに適切な対応を取りやすい。

ところがツアーナースは、担当する本人やその家族と旅の当日に初めて会うケースがほとんどだ。ツアーナースたちは、主治医が作った「診療情報提供書」「指示書・手順書(医療的ケアが必要な場合)」や、病院や介護施設、訪問看護などの看護師がまとめた“看護サマリー”と呼ばれる書類を手がかりに、ツアーに同行する本人の症状や状態をつぶさに読み取る。

診療情報提供書や指示書・手順書は医療的な視点から、看護サマリーは看護や生活支援の視点から、それぞれ本人の状態を詳細に記録したものだ。

医療従事者であれば、これらの書類を読み込むことにより、一定程度、本人の状態を想像することができる。

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