脳梗塞の老人を大移動させたツアーナースの苦悩 後遺症で言葉が話せない84歳男性の長距離移動

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髙橋看護師は次のように説明する。

「介護美容はシニア世代を中心に、認知症や身体に障害がある方を対象に美容を通して新たな生きがいや心の安寧を提供する専門技術です。メイクやネイルだけではありません。アロマセラピー、フェイシャルエステ、手足のマッサージ、足爪の角質ケアなどのフットケアも行います。

ただ美しくなっていただくだけでなく、施術の際には相手の肌に触れることで、その方の体や心の状態を把握し、個人個人に寄り添ったコミュニケーションを大切にしています。こうしたケアを通して、心のやすらぎや、身体機能の向上へもつなげることができると考えています」

医療依存度の高いツアー患者

50年以上、東京都葛飾区に住んでいた中島さんは、2023年の8月に肺炎を起こし、救急車で病院に入院した。それまでは健康状態に大きな問題はなく、1人で暮らしていた。しかし、その後の検査で脳梗塞が見つかり、2カ月ほどの入院で、症状は安定したが、重篤な後遺症が残った。

嚥下機能が著しく低下し、口から飲食物を摂取することができなくなった。生きるための栄養摂取は、静脈に直接高カロリーの栄養剤を点滴投与する“中心静脈栄養”によって行われていた。

失語症の症状もあり、自身の気持ちや思いを言葉にして表現することもできなくなっていた。

倒れてから1カ月間、滋賀県に住む一人娘の奥田清美さん(51・仮名)が、週に1度程度、見舞いに通っていた。しかし、入院期間が長引くに連れ、清美さんの心には不安が積もっていった。

──父は今後も治療が必要だけど、これ以上私が東京に通うのは、お金的にも体力的にも難しい。

清美さんは思い切って、主治医に相談し、滋賀にある療養型の病院への転院が決まったのだった。

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