サイバー藤田流「出戻り歓迎レター」に物申す 弁護士「果たして、誰がどう得をするのか」
藤田社長は、対象者を絞ることで、出戻り歓迎の文化が定着せず、もらっていない人には「自分はもどってはいけないのだ」と思われてしまうことなどの負の効果も気にしている。この制度をどう評価すればいいのだろうか。神内伸浩弁護士に聞いた。
「優秀な人材の出戻りを歓迎したいという会社の意図は分かりますが、果たしてその効果があるかどうかは疑問です。退職者はそれぞれ理由があって会社を去るわけです。ただでさえ戻ってくる可能性の低いところに、レター発送の有無で退職者の色分けをするような制度は、かえって負の感情を増大させるだけではないかと思います。
さらに、企業の事業運営を拘束するリスクもあります。
契約は、当事者間の意思表示の合致により成立します。通常は、一方が『申し込み』を行い、他方がこれを『承諾』することで成立するのですが、これを雇用契約にあてはめると、企業の求人募集に対して求職者が応募をすることが『申し込み』にあたり、面接や選考試験を経て企業が採用を決定することが『承諾』にあたります」
期間を定めた「申し込み」は、撤回できない
それとウェルカムバックレターが、どうかかわってくるのだろうか。
「退職者は通知を受けてから2年間、本人が望めば無条件で復職できるわけですから、これは企業から退職者に対して再契約の『申し込み』をしていることになります。
そして、今度は退職者が『承諾』をするという流れになるわけです。承諾の期間を定めてした契約の申し込みは、撤回することができません(民法521条1項)」
では会社にとってデメリットが大きいということか。
「レターを出した企業は2年間、撤回もできないまま退職者からの返事をひたすら待ち続けるという結果になるわけです。2年もあればいろいろ状況も変わるでしょう。後任が育ち、当該退職者の力を必ずしも必要としなくなっているかもしれません。
また、経営状況が変わり、人員削減の必要に迫られているかもしれません。しかし、一度行った申し込みは撤回できないのが原則です。逆に退職者は2年間の身分保証を得たことになります。果たしてこの制度、誰がどう得するのでしょうか」
神内弁護士はこのように話していた。
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