ホンダ新EV商品群「ゼロ」に問われるブランド力 その成否が命運左右も、高級「アキュラ」は苦戦

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トヨタは2030年時点でのプラットフォーム別の販売台数を掲げ、新たな生産技術「ギガキャスト」の採用などを通じたEVの生産コスト低減施策を子細に公表している。テスラも建設中のメキシコ工場で「アンボックスドプロセス」と呼ぶ生産手法を導入することを明らかにしている。

こうした新たな生産技術の導入についてもホンダは明確にしていないが、社内では検討が進んでいるようだ。

2020年代後半に向けてEV専用工場の建設を議論している。電池セル工場を併設し、EVを一貫して生産できる体制が有力となっているようだ。生産ラインのさらなる自動化やアルミダイキャスト部品の採用を拡大する方針で、ギガキャストの導入も検討している。

ホンダはカナダにも既存の生産工場を構える(写真:ホンダ)

青山真二副社長は「今後はEVの研究開発と生産工場がリンクして進化していく。専用工場を建てるうえで、いろいろな要素がある中で一つのキーワードはギガキャスト。それは入ってくるけど、一長一短ある」と話す。

EV専用工場の有力な候補地にカナダが挙がっているもよう。カナダはグローバル販売台数の3割を占めるアメリカに隣接するだけでなく、EV投資の誘致にも積極的で電池の資源採掘国としても注目を集めており、電池セルとの一貫工場を作りやすい。

EV時代の「ホンダらしさ」を示せるか

ホンダは2030年にEV販売200万台の目標を掲げている。2030年時点にゼロシリーズが大半というわけにはいかないが、ゼネラル・モーターズと数百万台規模を想定して共同開発していた量販価格帯のEVが計画中止になっただけに、牽引役としての期待は大きい。

ホンダ幹部は「他社とは劇的に違う何かをすぐに出せるわけではない。手元にある技術、商品でどう勝負するかだ」と語る。今回のゼロシリーズでは、どのようにEVとして価値を見いだすのかが大きな課題となる。

世界ではテスラや中国・BYDといった新興EVメーカーに加えて、欧州のプレミアムメーカーも高価格帯のEVを投入している。ゼロシリーズはEV時代の「ホンダらしさ」を示し、他社との激しい競争の中で存在感を示せるか。

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横山 隼也 東洋経済 記者

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よこやま じゅんや / Junya Yokoyama

報道部で、トヨタ自動車やホンダなど自動車業界を担当。地方紙などを経て、2020年9月に東洋経済新報社入社。好きなものは、サッカー、サウナ、ビール(大手もクラフトも)。1991年生まれ。

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梅垣 勇人 東洋経済 記者

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うめがき はやと / Hayato Umegaki

証券業界を担当後、2023年4月から電機業界担当に。兵庫県生まれ。中学・高校時代をタイと中国で過ごし、2014年に帰国。京都大学経済学部卒業。学生時代には写真部の傍ら学園祭実行委員として暗躍した。休日は書店や家電量販店で新商品をチェックしている。

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