「自然資本」への対応には日本の伝統文化が重要だ SDGsと「鎮守の森」やアニミズム文化をつなぐ

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つまり国内のさまざまな「自然資本」を(多少価格が上昇することがあるとしても)積極的に活用し、それを経済循環の中に組み込んでいくことができれば、それは多様な形の付加価値を生み、経済全体にとってもプラスに働くのである。これは前回記事の「市場経済・コミュニティ・自然をめぐる構造」と題した図にそくして述べた、“市場経済をその土台にある「コミュニティ」や「自然」にうまくつなぎ、それらと調和する経済社会システムを作っていく”という方向と重なっている。

そして「ネイチャーポジティブ」とはまさにそうしたことを指すだろう。具体的には、先ほど例として挙げたような、森林の活用を通じた国内材の使用や関連事業の展開もあれば、自然との関わりを心身の癒やしやツーリズムに活用していくことなど、無数の姿が考えられる。

加えて、「自然資本」が豊富に存在するのは地方圏なので、その積極的活用という方向は、一極集中の是正や「地方分散型」社会の実現にも寄与するだろう。

「自然資本」の活用を通じたプラスの経済循環や分散型社会の実現という発想がいま求められているのである。

自然資本と「鎮守の森」

最後に、「自然資本」や生態系というテーマに関して、ここ10年来ささやかながら私自身が進めてきたプロジェクトについて記させていただきたい。それは「鎮守の森コミュニティ・プロジェクト」というものである。

最初に知った時驚いたのだが、日本には神社、お寺がそれぞれ約8万ずつ存在する。中学校の数は約1万なので、平均すれば中学校区ごとに神社、お寺が8つずつ存在することになる。あれほど多いと思えるコンビニの数は6万弱なので(2023年)、それよりも多い数である。

ちなみに神社は明治の始めには約18万存在しており、これは大きく言えば当時の日本における自然村あるいは“地域コミュニティ”の数に対応していたと見ることもできる。つまり地域コミュニティの中心に神社が存在していたのであり、神社は「自然信仰」と一体となったローカルなコミュニティの拠点だったと言える。

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