「自然資本」への対応には日本の伝統文化が重要だ SDGsと「鎮守の森」やアニミズム文化をつなぐ

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「近年我が国では本格的な少子高齢化・人口減少社会を迎えており、特に地方においては農林業者の減少等により里地里山の管理の担い手が不足し資源が十分に活用されないことが、国内の生物多様性の損失の要因の一つになっている。同時に、海外の資源に依存することで海外の生物多様性の損失にも影響を与えている。すなわち、本来活かすべき身近な自然資本を劣化させながら、その変化を感じ取りづらい遠く離れた地の自然資本をも劣化させている」(強調引用者)

これは森林や生態系保全に関する日本の現状をストレートに批判する内容であり、政府の文書としてはかなり率直な表現と言えるだろう。つまり日本は豊富な森林をもちながら、それを十分活用せず、海外の安価な木材に依存し、結果として国内・海外いずれの「森林=自然資本」を劣化させているという指摘である。

論点をいくつか整理すると、現在の日本においては人口減少、それに加えて一極集中ないし都市集中が進んでいる結果、自然資本のいわゆる「アンダーユース(未利用あるいは過小利用)」の問題が生じている。

これは日本において「自然資本」や生態系保全のテーマを考える場合のきわめて重要なポイントと言える。つまり一般的には「自然資本」あるいは生態系保全というと、森林の過剰伐採など「オーバーユース」の問題が念頭に置かれるわけだが、日本の場合は上記のように人口減少等の要因から、それとは逆の問題が発生しているのだ。

政府や公的部門の対応が必要

ではどのような対応がなされるべきか。

まず単純に言えば、先ほどもふれた“多少高くても国内産の木材を消費者が買うようにする”という方向が考えられる。

しかし現実問題として、消費者に上記のような行動を期待することには限界がある。そうすると、(市場経済のみでの解決は困難ということで、)政府ないし公的部門の対応が必要ということになり、さまざまな公共政策(各種の補助金や従事者の所得保障など)が重要な意味をもつことになる。

実際、ヨーロッパ諸国は「持続可能な森林経営の強化」「持続可能な森林バイオエコノミーの推進」といった視点に立ち、特に環境保全の観点からのさまざまな支援策を展開している(「EU森林戦略2030」)。

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