なぜ吉野家の「チョイ飲み」店は人気なのか? 顧客の「行動観察」で見えてきた!

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飲み始めてから1時間ほど経つと店内はほぼ満席になり、だいぶにぎやかになってきました。それぞれのテーブルの上のビールジョッキは、片付けが間に合っていません。

お客さんたちはオペレーションの手際の悪さをあまり気にとめる様子はなく、和気あいあいとした雰囲気で飲んでいます。

隣のグループの話に聞き耳を立ててみると、どうもこの近くで働いており、ちょっと前からこの店の看板が気になっていたそうな。今回、友人とともに初めて来店したようです。

昼間、牛丼店として営業していることもあり、気取った雰囲気のない店内は、仕事の話というより友人との話、愚痴というより趣味の話。そんな雰囲気がお似合いのようです。

行動観察の結果には大ヒットの種がある

私たちは飲みながら、「吉呑み」を以下のように分析しました。

◎22時30分で閉店(When)
◎“家飲み”のような気安い雰囲気(Where)
◎20歳代中心の仕事帰りのお客(Who)
◎高価な食事よりも手頃な食事(What)
◎たくさん飲むより楽しく飲む(How)

実験店舗でオペレーションはぎこちないし、メニュー開発も発展途上であるものの、行動観察からわかる「4W1H」から、私たちは、家飲みのよさが広まったことで、家飲みのようにくつろげてサクッと飲める価値が、家の中にとどまらず外にも広がっていくと予想し、こうしたサクッと家飲みの雰囲気で飲める居酒屋業態はヒットするのではないかと結論づけました。

その予測ですが、間違いではなかったようです。吉野家は4月、夕方からアルコール類を提供する「吉呑み」と「吉呑みチョイ」の店舗を国内全店の約3割に当たる360店舗に拡大すると発表しています。まさに、冒頭で紹介したように、家飲みが拡大していることと居酒屋業態が厳しいということには、必ずしも因果関係はない、ということなのです。

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