「ブギウギ」が傑作になるかカギを握る"登場人物" レジェンド「おしん」を超えるためのポイント

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それを言い換えれば、これらのテッパンエピソードを惜しげもなくサブストーリーとして使用できる贅沢なドラマとも言えるのだ。おりしも、分散投資の時代である。リスクを減らしながら、リターンを目指したい制作事情であろうか(勝手な解釈だが)。

とりわけ、『夜来香ラプソディ』に関しては、このエピソードを描く理由がある。それは、笠置シヅ子の出世作『東京ブギウギ』誕生に関係しているからだ。服部良一は、アメリカのブルースやジャズを愛し、自身の楽曲に取り入れてきた中、昭和17年頃、“ブギ”の楽譜を手に入れて8ビートの躍動感に着目をはじめる。

音楽は時世にも国にも影響されない

服部良一の自伝『ぼくの音楽人生』によると、上海のコンサートで、李香蘭のために編曲した『夜来香ラプソディ』の最後にブギのリズムを挿入した。「今は戦争中で、敵国アメリカの新リズムとは言えない。しかし、いつかは日本でも使える日がくるだろう」とある。

戦争中、禁止されていた音楽を服部は虎視眈々と自分の曲に隠して発表した。『ブギウギ』の羽鳥は、はっきり音楽は時世にも国にも影響されないと言葉にした。

「日本にいちゃできないリズム」「聞くと胸のあたりがズキズキワクワクするだろう」「音楽は時世や場所に縛られるなんてばかげている。音楽は自由だ。誰にも奪えないってことを僕たちが証明してみせよう」(第65回より、脚本:櫻井剛)。早くも「ズキズキワクワク」のワードも発している。

服部良一の「しかし、いつかは日本でも使える日がくるだろう」が、戦後の『東京ブギウギ』に昇華するところがドラマではどう描かれるか、その日が待ち遠しいが、その前に、スズ子の恋愛エピソードもある。

笠置シヅ子が吉本興業の創始者・吉本せいの御曹司・吉本頴右と恋に落ちる話は涙なくしては語れない。笠置は子供を身ごもるが、恋人は病で早逝し、いわゆるシングルマザーとして子供を育てながら、スターとして活躍していくのである。

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