「ブギウギ」が傑作になるかカギを握る"登場人物" レジェンド「おしん」を超えるためのポイント

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躍動感あふれる『ラッパと娘』がヒットするも、戦争がはじまると、スズ子や羽鳥のやっている音楽は敵性音楽として取り締まられ、活動がしだいに限られていく。尊敬する人物でありライバルでもある茨田りつ子も然り。それでもスズ子たちは自分たちの音楽を諦めず、時代に抗っていく。

戦争が激化し、先の見えない最も暗い時期、羽鳥は上海の音楽会で、中国人作曲家・黎錦光(浩歌)の名曲『夜来香』に、アメリカのブギのリズムを取り入れ『夜来香ラプソディ』としてアレンジ、李香蘭がそれを歌う。この曲は羽鳥なりの抵抗であり、中国、日本、アメリカが音楽で国の違いを超えて混ざり合うという理想の実現化であった。

スズ子は『大空の弟』を歌い、戦争で夫を亡くした女性の心に寄り添った。『大空の弟』は、スズ子の弟・六郎(黒崎煌代)が南方で戦死した哀しみを歌に託したものである。一方、茨田は、鹿児島の海軍で、『別れのブルース』を聞きながら満足したように特攻に出ていく若者たちの姿に滂沱の涙を流した。

笠置シヅ子を主役にする意味

スズ子、羽鳥、茨田……三者三様に戦争と向き合った末、終戦が訪れる。史実的には、笠置シヅ子が“ブギの女王”として大スターに上り詰めていくのはこれからだ。明言はされてないが、おそらく昭和の喜劇王・エノケン(榎本健一)をモデルにしたらしき、タナケンこと棚橋健二(生瀬勝久)もこれから登場し、スズ子の演技の師匠となっていく。

笠置シヅ子、服部良一、淡谷のり子、李香蘭、エノケンと誰もが主役になりえる大物だが、ドラマの主人公はあくまで福来スズ子である。近年発見された、笠置シヅ子の数少ない軍歌『大空の弟』に着目し物語に取り入れたことは、笠置シヅ子をいま、モデルにしてドラマ化する価値を高めた。

羽鳥の上海のエピソードや、茨田りつ子と特攻隊のエピソードは有名な史実として強度があり、服部良一と淡谷のり子で2本分、独立した大作が描けるはずで、いささかもったいない感じもする。

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