あるガスタンカーが遠回りの長期航行を余儀なくされており、戦争と気候変動が海運業界に与える打撃が浮き彫りになっている。
タンカー「太平洋威海(パシフィック・ウェイハイ)」は14日、米テキサス州ヒューストンで中国・寧波向けの液化石油ガス(LPG)の貨物を積み込んだ。通常のルートなら30日かかるはずだ。しかし、今回は世界の貿易に打撃を与えている2つの大きな航行の難所を回避するため、15日間余分にかかる8000キロメートルの迂回(うかい)を行う。追加の運賃は180万ドル(約2億6000万円)に上る可能性がある。
通常なら、米国のシェール油田から中国のプラスチック製造施設にLPGを運搬する船舶は、パナマ運河を利用する。しかし今年は、干ばつで運河の水位が低下し、通航できる船舶の数が制限されているため、長い行列ができている。
同タンカーはその代わり、エジプトのスエズ運河を利用しようとした。しかしこの計画も、イエメンの親イラン武装組織フーシ派による紅海での商船への攻撃多発によってすぐに頓挫した。
同タンカーは18日にスエズから航路を変更し、アフリカの喜望峰に向かっている。データ分析会社ケプラーのアナリスト、キアラン・タイラー氏によると、こちらはパナマ運河経由よりも15日長くかかるルートだ。
26日発表のS&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのリポートによれば、こうした迂回は輸送コストを15%余り押し上げる可能性がある。バルチック海運取引所のデータによると、14日に米メキシコ湾からアジア北部への航路でガスタンカーをチャーターした場合、運賃は1日当たり12万3000ドル、15日間で約180万ドルだった。
ケプラーのデータと船舶情報サイトのイクエーシスによると、同タンカーは中国を拠点とするパシフィック・ガスが所有。同社からこれまでコメントは得られていない。
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原題:A Detour of 8,000 Kilometers Highlights Shipping’s Chokepoints(抜粋)
--取材協力:Yongchang Chin、Sarah Chen.
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著者:Elizabeth Low
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