営業マン社長が率いる不二越の「所得倍増計画」


 だが国内に売り先がないとなれば、中国に活路を見いださざるをえない。営業担当の部課長クラスを次々、現地へ送り込んだ。本人の意思は関係ない。言葉がわからなくても、とりあえず行け。「トイレで顔を見掛けたら、次、お前中国行くか、と。(嫌がって)泣いとるやつもおったね」(本間社長)。中国事業の統括チームや上海ロボットビジネスセンターなど、拠点も整えた。現地駐在の営業人員は、09年末の20人から11年春に70人まで拡大。11年末には100人規模に増える予定だ。

さらに、前社長時代の合言葉だった「脱自動車路線」を撤回する。一般的に、自動車向けの部品ビジネスは、産業機械向けに比べて儲けが薄い。収益基盤の安定化には、産業機械事業の拡大が必須だ。だが、自動車事業は売上高の半分以上を占める主柱。カーエアコン用のベアリングや、ギアを加工するヘリカルブローチなど、世界トップシェア製品も多い。「他社との競争に勝つにはシェア過半の強い製品が必要。脱自動車なんて言ったら、営業マンは売るものがなくなってしまう」(本間社長)。

やがて自動車や建機メーカーを中心に、中国のローカル企業から大型の商談が舞い込み始める。日系自動車メーカーを主要顧客に持つことは、世界トップレベルの技術の証。現地企業からすれば、のどから手が出るほどほしい高品質の製品、というわけだ。インドやASEANを含めた新興国向けが全売上高に占める比率は、08年度の17%から10年度は26%まで拡大。業績は市場の期待を上回るペースで改善し、10年度は82億円の営業黒字に転換した。リーマンショックで在庫の山を築いた工場には現在、中国への出荷を待つロボットが列を作っている。


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三菱重工と日立 「統合」破談から<br>10年 製造立国の岐路

10年前に統合構想が破談になった三菱重工業と日立製作所。その後両社は対照的な道を歩み、2009年に伯仲していた時価総額は今や日立が大きく上回っています。本特集では明暗が分かれた三菱重工と日立を主軸に、製造立国・日本の生きる道を探りました。

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