営業マン社長が率いる不二越の「所得倍増計画」
「10億円単位で注文のキャンセルが相次いだ。ロボットも工作機械も、売るところがない。在庫が何百台も並んだ」
富山を拠点に、工具やベアリング、産業用ロボットを展開する機械メーカー・不二越。本間博夫社長は、リーマンショック後の不況時をこう振り返る。2009年11月期は32億円の営業赤字。バブル崩壊以来、16期ぶりの赤字転落だった。
もっとも、不二越にとって好不況の狭間で苦しむのは、これが初めてではない。1964年には過剰設備がたたり、銀行の管理下に。さらに90年代初め、「財テク」失敗で巨額の赤字を垂れ流した。とはいえ、今回の不況はそのどれをも上回る規模。過去の経験では対応し切れない。
加えて09年、創業家出身で11年にわたり社長を務めた井村健輔氏が体調不良で会社を退く。「上がってくる数字は全部真っ赤っか。この会社どうなるんだ、と思った。どうやって従業員食わせるんだ」(本間社長)。
二つの方針転換を実行 大赤字からの急回復
大赤字からの復活を懸け、新社長以下経営陣は二つの方針転換を決断した。まず「中国市場の開拓」。次に「脱自動車路線の見直し」だ。
商習慣の違いや政治不安を考えると、中国進出に伴うリスクは大きい。さらにリーマンショック以前は主要顧客の日系自動車メーカー向けが超繁忙。新興国ブームの中にあって、09年までの不二越は、こと中国展開においては消極的だった。