「下町」であるほど多国籍という東京のリアル 漫画『東東京区区』著者かつしかけいたさんに聞く

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また多文化交流的な視点では「日本人」と「外国人」といった分けかたをしがちですが、日本で生まれ育ったセラムのような子どもや、ミックスルーツの方たちなど、その背景や育った環境はどちらかにきれいに分けられるものではないと思います。そのようなグラデーションも、きちんと描きたいと思っていました。

――下町情緒という言葉を日本人は好きですが、実際の下町は変貌しているということですね。

下町というと、どうしてもレトロといったイメージがつきまといます。ところが、実際に暮らしてみると、そうした風景はむしろ年々減りつつあり、新しい変化のほうが目につきます。

下町で目立つ新しい変化

むしろ、サラやセラムのように多様な背景を持つ人がいて、一方でさまざまな災禍を経験してきた歴史、困難な立場に置かれた人たちが暮らしてきた歴史もある。情緒や人情の残るレトロな街といった視点だけでは見えてこない「下町」こそ描きたいと思っています。

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また、漫画の舞台は東京東部で、あまりにもローカルな地域ばかり描いているため、他の地域の読者にどこまで伝わるだろうかと心配していたのですが、幸い全国から感想をいただいています。

さまざまな背景を持つ人が暮らしていることや、土地の歴史を調べる面白さなどは、東東京に限らない普遍性を持つテーマなのかもしれません。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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