先のガイドラインでは、小児期に便秘症を発症しやすい時期やきっかけの1つとして、学童における通学の開始や、学校での排泄の回避を挙げています。今回の調査結果でも便秘が疑われる児童で最も多いのは、学校生活にまだ慣れていない小学1~2年生でした。
ここで注目したいのは、学校での排泄の回避です。その理由はさまざまありますが、主なものとして、学校トイレの老朽化と、排便に関する教育がないことが考えられます。
まず学校トイレの老朽化についてです。
近年、家庭のトイレや商業施設のトイレは改善されたことで、過去のトイレのマイナスイメージが払拭され、居心地のよい快適な空間へと変わってきています。
古い・臭い・暗い「学校トイレ」問題
一方、学校トイレは“古い、臭い、暗い”という状態から脱していません。
文部科学省によると、公立小中学校施設は、建築後25年以上を経過した施設が保有面積の約8割を占め、洋便器率は68.3%(2023年9月1日現在)です。老朽化が進むなかで、児童がトイレを我慢してしまう気持ちもよくわかります。
小学校を対象とした小林製薬との共同調査では、現状で老朽化(すべて和便器、もしくは和便器が多い/すべて湿式の床、もしくは湿式の床が多い※湿式の床とは水洗いを前提としたタイルなどの床のこと)していると思われる小学校に、今後の便器と床の改修の予定を尋ねています。
すると、「両方予定なし」と回答したのは、78.3%でした。自治体におけるトイレ改修予算の有無による二極化も含めて、対策を検討する必要があります。
次に、小学校で排便について学ぶことが、義務教育に位置づけられていないことについてです。
食べることに関しては食育、体を動かすことは体育というように、健康的な生活を送るうえで必要な知識を学ぶ機会が設けられていますが、小学校の学習指導要領に「排泄」という文言がないため、排泄を学ぶ機会はありません。
排便は、食事、睡眠、運動などと同じ日々の生活のアウトプットです。排便状況から自身の生活を振り返ってフィードバックしていくことは、子どものうちに身につけるべき大切な習慣だと考えています。
排泄はなかなか話題にしづらく、また他人に見せるものではないので、考え方や情報が偏りがちです。だからこそ、排泄の大切さを子どもたちに共有するとともに、最新の知識を得るための学びの機会が必要です。学校教育において排泄に関する教育を実施すべきだと思います。
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