E.クラプトンも惚れた日産の洒落者「フィガロ」 今も英国で愛される1990年代の「パイクカー」

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屋根は、ルーフからリヤウインドウまでをソフトトップとして折り畳めるようにしたもので、Be-1とパオに用意されていたキャンバストップを、リヤウインドウ部分まで伸ばしたような成り立ちだが、2車種のキャンバストップが電動だったのに対し、フィガロのトップは構造が複雑なためか手動だった。

開けるときには、運転席足元のスイッチでトップを収めるトノカバーを開け、ソフトトップ前端のロックを外したあと、車外に降りてトップを畳んで格納、ベルトで固定してトノカバーを閉めるという手順だった。

キャンバストップの操作としては面倒なものだが、この手間が逆にスポーツカーのような特別なクルマだと感じさせたのも事実である。

キャンバストップを収めるためにスペースを割いていることがわかるリヤスタイル(写真:日産自動車)
キャンバストップを収めるためにスペースを割いていることがわかるリヤスタイル(写真:日産自動車)

リヤウインドウがガラスで折り曲げることができないこともあり、トップの格納部分は前後に長い。そのためキャビンは、後席が狭い「2+2」。

トランクはリヤのナンバープレート周辺だけが開口部で、内部はスペアタイヤが陣取っていたこともあり、荷物スペースはほとんどなかった。良い方向に捉えれば、この点もスポーツカー的だった。

ボディカラーはライトグリーン、ライトブルー、グレー、ベージュの4色で、いずれも今風に言えばアースカラーと呼べる、淡い色調だった。つまり、相棒やバナナマンの番組に出てくるブラックやイエローはオリジナルではない。

いずれのカラーでもルーフはホワイトで、インテリアもアイボリーで統一されていた。

デザインはレトロだが、ATやパワーウインドウなどを備える。当時、高級アイテムだったCDプレーヤーはオプション(写真:日産自動車)
デザインはレトロだが、ATやパワーウインドウなどを備える。当時、高級アイテムだったCDプレーヤーはオプション(写真:日産自動車)

しかも、メーターの文字盤はアンティークウォッチ風でスイッチの一部はトグルタイプ、シートは本革張りとするなど、カジュアルテイストだったBe-1やパオとは一線を画しており、パイクカーの中でも特別な仕立てだった。

パイクカーで唯一のターボエンジン搭載

メカニズムでそれまでのパイクカーと違っていたのは、1.0リッター直列4気筒エンジンにターボが装着されていたことだ。ここからも格の違いが伝わってきた。

ベースとなった初代マーチには、1.0リッター自然吸気の、ターボも用意されていた。また、ラリーに出場するため、排気量を930ccに縮小する代わりにターボとスーパーチャージャーを装着したツインチャージャーの「R」および「スーパーターボ」もあった。

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