ロードスター「いらない子」と言われた車の奇跡 苦境をはねのけライトウェイト復権の立役者へ

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そんな初代ロードスターは、バブル崩壊などにも負けず、8年間のモデルライフの中で約43万台が生産される、文句なしのヒットモデルとなった。

その間には、BMW「Z3」、メルセデス・ベンツ「SLK」、ポルシェ「ボクスター」、フィアット「バルケッタ」、「MGF」といった、さまざまなオープン2シーターが登場。絶滅状態にあった市場を再び盛り上げた。

BMW「Z3」は1.9リッターエンジンを搭載して登場(写真:BMW)
BMW「Z3」は1.9リッターエンジンを搭載して登場(写真:BMW)

各車ともロードスターのヒットを追うように、1995~1996年ごろに登場している。FFやMR(ミッドシップレイアウト)など、レイアウトはさまざまだが、軽量なオープン2シーターという点では共通する。

1989年に登場したロードスターが、1990年代に新たな市場を生み出したといえるだろう。オープン2シーター文化を復権させたといってもいいかもしれない。いずれにしても、ロードスターなしに1990年代の自動車文化は語れない。

ロードスターはその後、1998年に第2世代(NB型)、2005年に第3世代(NC型)、2015年に現行の第4世代(ND型)へと続いてゆき、マツダのブランドを象徴するクルマとなったのはご存じのとおりだ。

4代目ロードスターは2023年10月5日に大規模なマイナーチェンジを実施した(写真:マツダ)
4代目ロードスターは2023年10月5日に大規模なマイナーチェンジを発表した(写真:マツダ)

ライトウェイトスポーツの神髄

ロードスター最大のポイントは、世代が変わっても、「軽く」「安価」「後輪駆動(FR)」「幌のオープンカー」というライトウェイトスポーツの神髄を守り通したこと。その神髄を武器に、いわゆる「失われた20年」という日本の不景気の時代も、しぶとく生き延びたのだ。

また、初代ロードスターが提唱した「人馬一体の走り」は、いつの間にかマツダ全体の特徴にもなっていた。「人馬一体」もまた、ライトウェイトスポーツならではの魅力だ。

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ライトウェイトスポーツという本質を守り続けたことで、ロードスターがマツダというブランドを象徴する存在にまで成長したのである。

振り返ってみれば、「車種が足りない」「空前の好景気」「マツダの5チャンネル拡大路線」という背景がなければ「ロードスター」が生まれることはなかっただろう。時代が生んだ奇跡の存在。それが「ロードスター」と言えよう。

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鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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