「終焉か状況打開か」岸田首相に必要な"覚悟" ついに政策革新を果たしうる条件が整いつつある

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いま自公政権にとり必要なことは、与党間の協調関係を回復した上で、政治改革に取り組んで世論の期待に応えることである。だがこれは、自民党内で深い亀裂と対立を生むであろう。

ロッキード事件に直面した三木武夫内閣は、「三木おろし」に直面し、結局は総辞職を余儀なくされた。リクルート事件で首相自ら疑惑の渦中にあった竹下登内閣は、政治改革委員会を設置し、その最終決定である政治改革大綱を受け取ったあと総辞職した。

以後、選挙制度改革を進めるかどうかで自民党内に深い亀裂が生まれる中、東京佐川急便事件が竹下派の政治資金疑惑となるに及んで、小沢グループが離党するなど党が分裂して、宮澤喜一内閣は崩壊し、自民党は野党に転落した。

残された時間はそう長くはない

過去の例を見れば、自民党の中枢に関わる政治資金疑惑に直面した政権が、そのまま長期政権となることはまずない。岸田政権は、その終焉を覚悟しながら、政治改革に不退転の決意で取り組むという姿勢をとれるかどうかが問われている。

殊に不手際やさらなる不祥事が続き、内閣支持率1桁台にまで降下して総辞職も避けられなくなる事態もありうるとすると、政治改革のための検討会議を設置し、信頼に足る委員を任命するといった措置を早急にとらないと、何もしないままの退陣という不名誉な結末で終わることになりかねない。この問題で最初の引き金を引くまでに残された時間はそう長くはないのである。年明け通常国会で岸田首相がどう振る舞うかに注目したい。

牧原 出 東京大学教授

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まきはら・いづる

1967年生まれ。1990年東京大学法学部卒業。東大助手、東北大学教授を経て2013年から現職。専門は行政学・日本政治史。

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