「終焉か状況打開か」岸田首相に必要な"覚悟" ついに政策革新を果たしうる条件が整いつつある

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第2には、安倍派を中心とする政治資金問題が、高負担と物価高による生活苦にあえぐ国民の強い反発を招いている。自民党とりわけ安倍派の構造的な金権体質が改めて浮き彫りになり、政治改革への着手が不可避となっている。特に各種世論調査では、自民党の支持率が下がり始めた。今や与野党全体で政治資金問題に取り組むことが、何にもまして必要となっているのである。

第3には、同じ与党の枠組みの中でも、公明党との関係が対立含みであることだ。解散が取り沙汰されていた2023年5月、東京都で公明党との選挙協力が一度は解消された。新設選挙区に公明党が候補擁立を希望したのに対して、自民党側が候補擁立に固執したからである。その後両党は改めて選挙協力をすることで合意したが、信頼関係の回復に至ったとは言いがたい。岸田首相自らは公明党に近いリベラルな政策志向はあるものの、敵基地攻撃能力を認めた防衛関係3文書の改訂などでは公明党側の懸念に応えていない。

そして11月に池田大作創価学会名誉会長が死去し、公明党の集票力の低下が危惧されるようになった。選挙協力の効果は薄れながらも、連立解消までは至らないという両党の関係は、政権の支持基盤を次第に弱めつつある。

自公政権そのものが弱体化

このように、岸田首相への信頼感の失墜もさることながら、現在の自民党さらには自公政権そのものが弱体化している中で、首相の交代という看板の付け替えだけでは、内閣支持率の回復は望めない。2024年9月の自民党総裁選挙の前に「岸田おろし」を仕掛けるメリットは党内にはないのである。

とはいえ、そもそもの問題は岸田政権の性格にある。2021年9月の総裁選挙で勝利して成立した岸田政権は、安倍元首相と安倍派の支援が最大の政治資源であった。岸田首相は、党内第4派閥であるがゆえに最大派閥の支持は不可欠である上に、7年8カ月の長期政権を担った安倍元首相のアドバイスと支援を頼りにしつつ、政策を推進した。

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