岸田文雄首相、「意外な交代人事」の裏舞台 "党改革"への思惑がにじむ「渡海政調会長」

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岸田文雄首相(写真:時事)

岸田文雄首相が22日に行った党役員の交代人事第2弾が、政界に波紋を広げている。巨額裏金疑惑で東京地検特捜部が19日、安倍、二階両派を対象とした強制捜査に着手したことも踏まえての人事断行で、岸田首相は「安倍派5人衆一掃」の総仕上げとして、政調会長に渡海紀三朗氏(75)、国対委員長に浜田靖一氏(68)という無派閥の両べテラン議員を起用した。

浜田氏は岸田首相と初当選同期で、岸田国対委員長時代に委員長代理として支えるなど親交が深い。今回の一連の人事では、岸田首相は松野博一官房長官の後任を打診したが浜田氏は固辞し、国対委員長を希望したとされる。もともと国対畑が長く、その人柄の良さから与野党に幅広い人脈を持つだけに、「大荒れ必至の次期通常国会を切り回すためのはまり役」(自民長老)との声が多い。

一方、渡海氏の起用は下馬評にも上がらなかっただけに、「意外な人事」(麻生派幹部)とみられている。ただ、リクルート事件の際に大胆な党改革を目指して党内若手が立ち上げた「ユートピア政治研究会」の主要メンバーで、離党してさきがけに転じたあと自民に復党したことで、現在の野党幹部とも親交があり、「野党も攻めにくい巧妙な人事」(自民長老)と評価されている。

その一方で、「今後の党改革断行への先兵としたい岸田首相の思惑がにじむ」との見方も広がる。

「私でよければ」と渡海氏応諾

岸田首相は21日に渡海氏に政調会長就任を正式に打診、同氏も「私でよければ」と応諾した。官邸での岸田首相との会談後、渡海氏は記者団に対し「(リクルート事件以来)政治改革を熱心にやってきた。派閥の弊害はなくさなければならないが、集まって勉強する、あるいはリーダーを党の中で押し上げていくことは、問題ないと思う」などと語った。

これと並行して岸田首相は同日、中曽根康隆党青年局長代理を官邸に呼び、政治改革に向けて全国の党員から意見を聴取するよう指示。中曽根氏も党内若手を糾合して政治資金法改正や派閥の弊害排除に取り組む意向を伝えたとされる。

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