今回、岸田首相が渡海氏起用に踏み切る理由となったとされる「ユートピア政治研究会」は、後の細川護熙政権で官房長官を務めた武村正義氏(故人)が中心となって結成され、その後結党した新党さきがけの母体となったことで知られる。
結成時のメンバーは武村氏を含め、三原朝彦、鳩山由紀夫、杉浦正建、渡海紀三朗、鈴木恒夫、小川元、石破茂、井出正一、金子一義各氏の計10名。のちにメンバーは計17名となったが、リクルート事件を踏まえ「どうすれば汚職のない政治が実現できるか」が同研究会の最大のテーマだった。
結成後、同研究会は学者や官僚、当時の後藤田正晴・党選挙制度調査会長(故人)らを講師に勉強会を重ね「政治改革への提言」をまとめて、当時の安倍晋太郎幹事長ら党執行部に実現を求めた。
同提言の主な内容は①公職選挙法については、比例代表制を加味した小選挙区制の導入を研究すべき②早急に衆議院の定数是正を行う③議員活動を保障するため、事務所維持費、秘書の人件費など必要な基礎活動費は国の負担とする④政治資金集めのパーティーは政治団体による開催に限定し、収支公開を義務付ける――などだ。
まさに、今回の巨額裏金疑惑の発覚を受けての政治改革論議を予見していたような内容ともみえる。そして、その中心人物の一人として、その後も一貫して「政治とカネ」問題への厳しい対応を主張し続けてきたのが渡海氏なのだ。
前回総裁選で野田聖子氏の「20人目の推薦人」に
さらに、岸田首相誕生の舞台となった2021年9月の自民党総裁選では、土壇場で20人の推薦人を確保して出馬にこぎつけた野田聖子氏の「最後の推薦人」となったのが渡海氏。
野田氏の出馬については、総裁争いで優位に立っていた岸田陣営が「ライバルの高市氏(早苗・現経済安保相)の票を減らすたに様々な裏工作を展開し、その結果として、渡海氏が推薦人に加わってくれたことが、今回の渡海氏起用に結びついた」(岸田派幹部)との経緯もあるとみられている。
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