財務省と内閣府・諮問会議が、不毛の対立に

経済成長主導による財政健全化策のワナ

財務省側からは、歳出の抑制策について個別具体的に提示があり、社会保障だけでなく歳出全体の増加抑制によって基礎的財政収支赤字の大半は解消可能と提案するが、内閣府と諮問会議は、それを退けようとする構図という。

そもそも、後述するように、こうした対立の構図で見るのは的を射ていないのだが、財務省が提案する歳出改革主導の財政健全化案を退ければ財務省の影響力が抑えられると思いきや、むしろ財務省の影響力を強めることにすらなることを理解していない。

成長主導の財政健全化策は、結局「財務省主導」を招く

というのも、財務省の影響力は、毎年度の予算編成での査定権が1つの源である。歳出改革主導の財政健全化案を裏付ける具体的な歳出抑制策について、諮問会議であいまいにしか決められなければ、結局、内閣では毎年度の予算編成過程でその具体策の採否を決めるしかない。法律の定めに基づき、内閣における予算の調整を行う責任者は、財務大臣である。

これまでの予算編成とは、良しにつけ悪しきにつけ、複数年度を見渡した予算額を必ずしも視野に入れずに、毎年度の予算額を認めたり削ったりするやり方である。これは、場合によっては、将来の予算額についての予見可能性を低めてしまうこともある。

社会保障制度の予見可能性を高める形で改革を進めたいなら、今月末にも取りまとめる財政健全化計画で、改革の具体策を明確にして、来年度以降の予算編成をこの計画に従わせる形をとった方がよい。そうすることで、毎年末に編成される翌年度予算案で増えただの減っただのと一喜一憂するようなことをせずに済む。これは、一見すると、今月の計画策定において財務省の提案を飲むように見えるが、毎年度の予算編成では財務省の影響力行使を抑え、社会保障費などで予見可能性を高められる。

経済成長主導の財政健全化計画を策定したとしても、予定通りに税収が入らなければ、その収支尻をどのように合わせるかについて、毎年度の予算編成で個別に決めなければならなくなるから、結局は、財務大臣による予算の調整に委ねられることになる。

要するに、財政健全化計画において、歳出改革の具体的な内容を金額を含めて盛り込めば盛り込むほど、それだけ諮問会議での決定事項(これが閣議決定となる)によって将来の予算が形作られることになる。それが手ぬるくなればなるほど、毎年度の予算編成において財務大臣による予算の調整が必要となる。

とはいえ、閣内での議論である。内閣府の影響力だとか財務省の影響力だとか省庁の対立という構図で捉えては、内閣のまともな意思決定はできない。対立の構図で捉えることなく、社会保障制度を健全な財政で支えて持続可能にし、国民皆保険を維持するにはどんな改革策が必要か、今こそ具体的に決めるときである。

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