財務省と内閣府・諮問会議が、不毛の対立に

経済成長主導による財政健全化策のワナ

1つは、社会保障をめぐる給付と負担の世代間格差がすでに顕在化しており、改革を遅らせるほど世代間格差が放置されることになるからである。

この是正にできるだけ早期に着手する必要がある。デフレ脱却を待ってからでは遅い。ただでさえ、わが国の社会保障制度は賦課方式(今の若い人が払った保険料や税を、今の高齢者への給付に用いる方式)であるから、若い世代の人たちの社会保障制度に対する信頼が損なわれれば、たちまち今の高齢者への給付に支障をきたす。

世代間格差を是正して、今の若い世代の人たちの社会保障への信頼を高めることは、単に今の若い世代のためだけでなく、今の高齢者への給付のためでもある。

もう1つは、団塊世代が75歳以上になる2025年までに、筋肉質の社会保障制度にしておく必要がある。今の社会保障給付は、人の体にたとえれば、ずいぶんと余分な贅肉がある。例えば、過剰な投薬や高コストの病床構造などである。

「困っていない人」にも出す、日本の無駄な給付構造

社会保障における贅肉とは、総合研究開発機構(NIRA)の共同提言「社会保障改革しか道はない(第3弾) 2025年度に向けた7つの目標」の言葉を借りれば、「困っていない人」にも出してしまう給付である。それは、日本の社会保障制度で、年齢・世代を基準にして給付を出す仕組みが基軸となっているからである。

新たに構築すべき日本の社会保障制度では、贅肉をそぎ落として筋肉質にする改革、つまり年齢を問わず真に「困っている人」に必要な給付を出すとともに「困らない人」を増やすことが必要だ。

そのためには、今は出されている過剰な給付(贅肉)を、2025年までにはなくして、団塊世代を中心に老後の制度設計を予見可能にする必要がある。老後の生活を予見可能にするには、2025年の直前になって改革に着手しては遅い。2010年代後半に改革に着手して、2025年より前に改革を完了しておかなければならない。だから、社会保障改革の具体策を議論するのは今なのである。

これら2つの理由は、財政健全化が主目的のものではない。われわれの社会保障制度をさらに信頼できるものにするためのものである。

この観点からすると、財政健全化計画の内容を議論する経済財政諮問会議でも、今まで以上に踏み込んだ社会保障改革が俎上にのぼり始めている。それはよいのだが、他方で、経済財政諮問会議では、経済成長を促せば歳出削減が緩んでも財政収支の指標が改善するとの認識を基に、経済成長を重視する形で財政健全化計画を策定する方向に傾きつつあるとの報道もある。

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