学校心理士の元校長が語る「不登校」の全体像 読み書き障害・ギフテッドなどケースは多様
――日本にはそもそも不登校支援は少ない?
いえ、そうとも言い切れません。政府が教育基本法に基づいて教育に関する施策をまとめた「教育振興基本計画」というものがあります。
これは5年ごとに見直して「何を目標とするのか」「どこに力を入れていくのか」を計画していますが、直近の第4期の「教育振興基本計画」を見ると、明確に基本施策の中に「不登校児童生徒への支援の推進」「特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援」という文言が盛り込まれました。
つまり、きちんと予算を取って国としても支援していきますよ、ということです。
不登校児童生徒の受け入れ先として不登校特例校の設置も増やす計画です。不登校特例校はまだ全国に24校(文部科学省、2023年調査)しかありませんが、今後300校を目指す、という話もあります。自治体レベルだと独自の不登校支援をやっているところも多いです。
――欠席日数が多いと入試に不利になる、という情報もあります。
東京都立高等学校の入学者選抜検討委員会報告書によると、2023年より東京都では高校の入試の調査書に出席日数を記載しないでいい、という方向になっています。
つまり、中学校時代の出席日数が合否を左右することはない、ということです。これは大きな変化だと思います。
「積極的不登校」もある
――今後、不登校の子どもをどう見守っていけばいいでしょうか
親世代の頃は不登校を「登校拒否」と呼び、非行と同じレベルで語られていました。しかし平成になってから「不登校」という言葉が広く使われるようになり、欠席の理由もさまざまだと認められるようになりました。
そして令和になり、新たに自分の意思で学校に行かないことを選択する「積極的不登校」という言葉が出てきています。コロナによってオンラインでの学びが日常的になったのも大きな要因です。
例えば、勉強はオンラインでやって残りの時間は自分の好きなことをやりたい。コミュニケーションもオンラインでできるし、時々なら仲間とリアルで会うから大丈夫、という子もいるかもしれません。
その生き方を親御さんも認めて、うちはそれでいい、となったら「積極的不登校」になります。
そもそも同じ地域の同年代で、同じ教室・先生・教材で学ぶ今の学校教育に違和感を抱き、自分流の学びをしたいと感じる子の意思は尊重すべきものだと思います。そのような子の中にこそ、これからの日本の未来を担うべき人材がたくさん出るんじゃないかと私は思っています。
ただし、気をつけなければいけないのは、不登校の子の中には「学校に行きたいけれど行けない」という子もたくさんいることです。ですから不登校を「積極的不登校」とひとくくりにしてもいけません。それぞれの子が不登校に至るまでの背景や気持ちをしっかり見ることことが大事です。
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