学校心理士の元校長が語る「不登校」の全体像 読み書き障害・ギフテッドなどケースは多様
短期的な場合の原因は、先生や友達との関係で生まれたちょっとしたトラブルが多いように思います。先生に何か嫌なことを言われたとか、友達にばかにされたとか、学校生活に原因があり、ある程度明確なきっかけがある。これらは原因が明確なだけに、家庭と担任との連携で結構、短期的に解決できます。
中期的なものになると家庭に原因があることもあります。父親が単身赴任中のため母親が子育てに孤軍奮闘していて、結果、家の中が不安定になっているとか、弟や妹が生まれて上の子が赤ちゃん返りし、学校に行けなくなってしまったとか。
学校外のことが要因でもやはり学校と家庭が連携しつつ、ソーシャルスクールワーカーやスクールカウンセラーなど、専門性を持った人にも協力してもらうのがいいと思います。
長期的になるものは「いじめ要因」の場合がありますが、発達障害など本人の特性に起因することもあると思います。発達障害など本人の特性の場合です。特にディスレクシア(文字の読み書きに困難を生じる障害)、ディスグラフィア(文字を「書く」ことに困難がある学習障害)の子どもは、どうしても授業の参加が消極的になります。
さらに「怠けている」など周りから言われると、学校に行きたくなくなるケースが多い。ギフテッド(特定分野に特異な才能のある児童生徒)の場合は、授業がつまらなくて学校に行きたくなくなる。
このような本人の特性は基本的には改善しません。適応教室に通う、医療的な診療を受けるなども必要になりますし、場合によっては環境を変えるために転校もありだと思います。
読み書き障害やギフテッドのケースも
――読み書き障害の場合は周囲からわかりにくいことも問題視されています。
「書けない」ことが原因で学校に行きにくくなる子は実は多いです。内容がわかっていても、文字を書けなければ学校での評価は低くなってしまいますし、「いじめ・排斥→ 登校しぶり→ 不登校」の前に「文字が書けない、勉強ができない→ 仲間はずれ・排斥」の構造もあると考えています。
しかしこの因果関係は公的にははっきり発表されていません。「発達障害」と「不登校」は文部科学省内で調査をしている部署が違うのです。基本的に縦割りの役所の中ではうまくシンクロできていない、という問題もあるように思います。
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