学校心理士の元校長が語る「不登校」の全体像 読み書き障害・ギフテッドなどケースは多様
――学校側はどうしたらよいのでしょうか?
低学年の先生には、漢字の書き取りの宿題に「何分かかったか」書く欄を作ってほしいと思います。かかった時間を書いてもらうだけなので簡単です。
みんながだいたい10分で終わる宿題に、30分や1時間かかっている子がいたら学習障害かもしれない、と気づくきっかけになります。そのような子には「書き取りは1文字10回じゃなく、3回でいい」といった宿題のコントロールをすることが大切です。
――ギフテッドに関しては?
今はギフテッドに関して少しずつ認知度も上がってきましたが、昔は全然理解されませんでした。私が現役で小学校の校長をやっているときも何人かギフテッドの子がいました。ある4年生の男の子は、幼少期は従順で勉強もできて、親御さんから見ると自慢の息子だったんですね。
ですが、9歳の壁といわれる3、4年生の頃から自我も出てきて、ささいなことでイラついて友達とけんかになる、家では暴れる、荒れる、といった状況が続きました。お母さんが「うちの子、どうしちゃったんだろう」と相談される中で、いろいろ調べるとI Qが140ぐらいあり「ギフテッドかもしれない」とわかったんです。
当然、学校の授業はつまらなくて、苦痛なわけです。印象的だったのはその子が「先生は助詞の使い方がおかしい」と言っていたことです。多分、聴覚優位でもあったんでしょうね。そこで「学校に来ても無理に授業に参加しなくていい」とすると、よく校長室で過ごしていました。
日本の不登校支援は少ないのか?
――ギフテッドの子の対応はどうしたらいいでしょうか。
私は約20年ほど前に、アメリカのフィラデルフィアで補習授業校の校長を務めていました。娘はアメリカの現地校に通っていたのですが、私に「すごいんだよ、トムは算数ができるから算数の時間は中学校に行くんだよ」と話していたのを覚えています。
海外では飛び級制度を科目や学年単位で採用しているところは多いんですね。一方で日本は、一部の大学や大学院しか飛び級制度はないと思います。
そもそも日本の学校教育はIQ100ぐらいの中間層に向けて授業の内容や進め方の速度が構成されています。その層よりIQが低い子たちは「特別支援学級」や「特別支援学校」など学びの場が用意されているのですが、IQが高いギフテッドの子たちに対しての支援はほとんどありません。
算数など個人差が出やすい教科を中心に到達度別の授業を行っている学校はありますが、あくまで全員が一定のレベルに到達することを目的としていて、ギフテッドの子のためのメニューではありません。そこは課題でしょう。
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