「お金あっても不幸な人」「なくても幸せな人」の差 田内学×銅冶勇人「お金か仲間か」対談【後編】

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銅冶:どこかで脱線してうまくいかないときがあっても「必ず帰ってこられる一本の軸」が一個あることが組織として大事で、ここが何個もあったら難しいんです。

田内:今、僕らに足りていない幸せとか生活の豊かさを、銅冶さんの生き方から学べると思っています。

僕も若い人たちの前で講演することがあるんですけれど、仲間を作ることが大事で、目的を共有することが大事だよって話をするんですよね。それを実践してて、お手本のような生き方をしているのが、銅冶さんだから。

エゴからのスタートでもいい

銅冶:田内さん、本質の軸は変わっていないと思うんですけれど、話の仕方というか、発する言葉の使い方が大きく変わりましたよね。

今こうして本を2冊書かれて、今後どういう人たちにどういうインパクトを残していきたいんですか?

田内:やっぱり若い人たちに僕の本を読んでもらいたいんですよね。

NISAで投資しなきゃいけないとか、不安をなくすためにはお金を貯めることが必要だよねとか、そうじゃないことを知ってほしいんです。

お金を増やすことだけじゃなくて、社会のことも考えてほしい。社会のことを考えるっていうと、利他的だと思われがちですが、これは僕のエゴなんです。

銅冶:自分がそうしたいってことですね。

田内:そう。僕の小説の中に「お金は奪い合いだけど、未来は共有できる」という言葉があります。

誰もが生活を豊かにしたいって思っていますよね。でも、そこでみんながお金を増やすことを目標にすると、ただの奪い合いになっちゃうんですよ。お金は財布から財布への移動でしかないので、誰かのお金が増えるときには、誰かのお金が減っているんです。

株を安く買って高く売ろうとするのも同じ。誰かは安く売らされて高く買わされる。みんなでそのゲームを頑張るのってしんどいですよね。

それよりも、暮らしやすい未来の社会を作ることを目的にしたほうがよくないですか。別に他の人のことを考えろってわけじゃない。僕の家族が住みやすい社会にしたいというエゴです。

そういう意味ではエゴなんですけど、「住みやすい未来の社会を作ろうよ」って目的は、他の人とも共有できますよね。そういうご提案をしているつもりです。

銅冶:変わりましたね、田内さん。オフィスで営業マンと侃々諤々、議論していた怖い田内さん、みんなに見てほしかったな。

田内:そんなに怖かったかな(汗)。

銅冶:自分を大きく見せないといけない瞬間って誰にでもあるから、演者じゃなきゃいけなかったんですね。でも、結局のところ、根の部分があったかい人なんです。そうじゃなきゃ、こんなあったかい小説、書けませんよ。

(構成:川口玲菜)

田内 学 お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家

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たうち・まなぶ / Manabu Tauchi

お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家。2003年ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブなどの取引に従事。19年に退職後、執筆活動を始める。著書に『お金のむこうに人がいる』、高校の社会科教科書『公共』(共著)など。

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銅冶 勇人 DOYA CEO/NPO CLOUDY 代表理事

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どうや ゆうと / Yuto Doya

1985年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。2010年に特定非営利活動法人CLOUDYを設立。ケニアのスラムに住む子どもたち教育・雇用支援を開始。2015年にアフリカ・ガーナでの雇用創出を目的としたファッションブランド“CLOUDY”をスタートし、これまで約630名のワーカーを雇用。現在7つの学校を運営し、これまで約3,800人の生徒に教育の機会を提供。CLOUDYとNPO CLOUDY二つの組織でクリエイティブとビジネスを循環させ、アフリカの自走を実現する。

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