肥満治療薬「美容目的で使う人」に生じる"その後" シワが増える「セマグルチド顔」が米国で問題に

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問題は、うつ傾向が強い人の中にはやせ願望が強く、個人輸入などのかたちで主治医の精神科医に隠れてGLP-1受容体作動薬を利用する人がいる、ということだ。

自殺企図などの副作用が出ても情報を収集することができず、水面下で被害が増える可能性がある。政府はもちろん、専門家やメディアもリスクについて啓蒙する必要がある。

一部で報告、発がんとの関係は?

発がんについての懸念も報告されている。それは5月、EMAがノボ・ノルディスク社が販売する別のGLP-1受容体作動薬のリラグルチドの使用者で、甲状腺がんの増加が認められたというものだ。

一方で、5月にはアイルランドの研究者が、GLP-1受容体作動薬がナチュラル・キラー細胞などの免疫系を活性化し発がんを予防するなど、まったく逆の研究成果を『Obesity(肥満)』誌に発表している。

GLP-1受容体作動薬が免疫を活性化することについては、ほかの研究グループからも発表されている。まだ、結論は出ていないが、現時点では大きな心配はしないでいいだろう。

筆者はがん家系の肥満患者に対しては、発がんのリスクよりも減量の効果のほうが大きいと考え、GLP-1受容体作動薬の使用を勧めている。

これが現時点でわかっているGLP-1受容体作動薬の負の側面だ。今後、ますます研究が進むだろう。状況は大きく変わるはずだ。使用にあたっては、ぜひ肥満治療を専門とする医師にご相談いただきたい。

セマグルチドの体重減少を示した臨床研究が掲載された『ニューイングランドジャーナル』より
上 昌広 医療ガバナンス研究所理事長

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かみ まさひろ / Masahiro Kami

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

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