貧困に子どもの不登校。ギリギリな日々を抜けて お金が不安で休めない養育費0のシングルマザー
──拓也さんが入院した2020年には、コロナ禍で緊急事態宣言が出ました。仕事も途絶えて、苦労されたと思います。
たしかに、仕事がすべて飛んでしまったのでたいへんではありました。でも、あのとき「世のなかには、私の力ではどうにもできないことがある」と気づいたんです。私さえがんばればなんとかなると思って必死になっても、強制終了になってしまうこともあるんですよね。それに気づいた瞬間、仕事への執着がすーっと消えて、見える景色が変わりました。「無理なものは無理、大事なのはみんなが健康でいること」だと心底思えたんです。
写真で思い出す 自己肯定感
同時に、私には地元に友だちがいないこと、もし地元の人たちとつながれたら、そこから仕事が生まれるかもしれないことにも気づいて、写真をテーマにした小さな活動をいくつか始めました。そのうちの1つが、子どもががんばったときの写真を部屋に飾って、子どもの自己肯定感アップを目指す「ほめ写プロジェクト」のアンバサダーになったこと。でも、考えてみたら、私は子どもの写真を飾ったことなんてこれまで一度もありません。だから、拓也が野球の試合でヒットを打った瞬間の写真を、壁の穴をふさぐように貼ってみました。そうしたら、1カ月くらいたったときに「俺、このとき、このカーブを待ってたんだ」って、写真を見ながら得意気につぶやいたんです。ああ、こうして自分で自分を認めることが大事なんだな、と思いました。せっかく写真に携わっているのだから、こうしたこともみんなに伝えていきたいな、と遅ればせながら思っています。