2万人調査でわかった「子どもの本当のつらさ」 コロナ禍で何が起きているのか
小児科医の私が調査にかかわり始めた経緯
新型コロナウイルス感染症が子どもに与える影響を調べるため、国立成育医療研究センター『コロナ×こども本部』を立ち上げたのは、緊急事態宣言が発令された4月のことです。
約1カ月前の3月には、ご存じのとおり全国の小中高校が臨時休校になりました。当時から「子どもは感染しても重症化しない」と言われていました。とはいえ、新型コロナがいつ終息するのかは誰にもわからないなか、突然の休校にとまどい、苦しんでいる子もいたはずです。子どもにかぎらず、お母さんやお父さんも、かつてない出来事への対応に追われ、たいへんだったでしょう。
ところが、そのことにまったくスポットを当てられていなかったのが3月~4月ごろでした。
私は小児がんを専門とした小児科医で、ふだんはおもに小児がんを経験された方たちが抱える心の問題や、社会的問題に焦点を当てた研究をしています。私生活では2歳と5歳の子がいて、3月には、上の子が通う幼稚園も休園となり、下の子も登園を自粛せざるを得ない状況に追い込まれました。やむを得ず在宅で研究活動を行なっていましたが、オンライン会議中に子どもたちが家じゅうを牛乳まみれにするなど、次から次へと事件が起こり、毎日がカオスな状況に。
そうこうしていると、ついイライラしてきて、子どもにあたってしまう自分がいることに気づいたのです。園のお友だちに会えず、家で静かにすごすことを強いられて、子どももどこか不安が強くなっているように見えました。
これではいけない。そう思うと同時に、私だけでなく、世の中の多くの人がストレスを抱えているのではないか、と考えました。このように研究者としてというよりも、母親目線で危機感を持ったのが『コロナ×こども本部』を立ち上げたきっかけです。
その後、勤務先の国立成育研究センター社会医学研究部やこころの診療部に呼びかけ、異例ともいえる速さでプロジェクトが始動しました。「新型コロナが及ぼす子どもの心への影響を見逃してはいけない」という思いに共感してくれた研究者や医師などの有志たちは、そのほとんどが乳幼児から高校生の子を持つ母親です。