2万人調査でわかった「子どもの本当のつらさ」 コロナ禍で何が起きているのか
子どもたち全体のようすを正確に把握したい場合には、調査に協力してくださる人の偏りを最小限にするために、本来であれば住民基本台帳からランダムに抽出した家庭に郵送で協力をお願いするといった手法が望ましいと言えます。
そのためには充分な予算と準備期間を確保することが鉄則ですが、急いで立ち上げたプロジェクトゆえ、予算もなければとにかく時間が惜しい。
親と子を対象にした「コロナ×こどもアンケート」の実施にはまず、社会が子どもの心に目が向いていない状況をなんとかしたいという思いがありました。そして、アンケートに回答することで、親自身が「私ってイライラしやすくなっているかも」「うちの家族は今こんな状態なのかも」などの気づきや、明日につながるヒントを得てほしいという思いがありました。
そのため何よりもスピードを優先して、SNSやメディアなどを中心に回答者を呼びかけました。参加したい人が誰でも参加できるかたちにして、緊急事態宣言下の4月~5月に第1回目のアンケートを実施することができました。
回答者はインターネットの環境が整っていて、このような調査に関心のある保護者とそのお子さんが多く、累計の回答者数は第1回から第3回まであわせて約2万5000人。保護者と子どものペア、子どものみ、保護者のみと回答の仕方はさまざまです。
コロナが及ぼす心への影響
「コロナ×こどもアンケート」は、「子どもは重症化しないから大丈夫」とおざなり気味にされている子どもたちの心の傷を拾い上げることに一番の焦点を当てています。そのため、子どもの心のストレス症状を見極める10の質問項目をつくりました。
10の質問項目はPTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断基準を参考に、「最近イライラしてしまう」「自分を傷つけるようなことをしてしまう」など、オリジナルで作成したものです。アンケートを実施するたびにくり返し、たずねています。
結果、小さい子ほどコロナと聞くとイヤだと感じたり、不安やこわいと感じたりしていることがわかりました。何がイヤなのかは自分でもわからないなど、言葉で表現するのが難しいのは、低学年ほど顕著です。
中高校生になると、「イライラしてしまう」「集中できない」といった声が上がると同時に、自由記載の欄に具体的な言葉を書き込んでくれることが多くなります。
彼らの声は、「勉強ばかり押しつけられている」「部活や修学旅行が中止になり、自分の目標が見えない」「学校へ行きたいというモチベーションがそがれてしまう」といったもの。モチベーションがそがれてしまうから、集中力が落ちるのか。集中力が落ちるからネガティブに考えてしまうのか。あるいはそれらがからみあっているケースも考えられるかもしれません。