OpenAI騒動が示す「人類がAIと戦っている」現実 効果的利他主義者が去った後、何が起こるのか

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大規模言語モデル(LLM)によるAI開発のために優れたAI研究者、開発者を集める必要があるというのが営利化の理由で、社員は他のスタートアップと同様に未公開株を得ている。同社が成功裡のうちにイグジットを果たせば、社員はミリオネア、ビリオネアになるという筋書きだ。

それでもOpenAIは、今回の騒ぎまでNPO的な価値観を保持していることをアピールしていた。営利部門は投資の100倍と利益に制限を設けていることもそうだが、理事会メンバーにはNPO創設時の価値観を掲げるメンバーが留まっていた。マイクロソフトから送られるメンバーがいないこともその証とされた。

投資畑出身者とNPO的価値観の「溝」

ただし、騒ぎで報道されたように、理事会メンバーらはアルトマンが進める加速度的な開発に懸念を抱いており、ChatGPTの公開も安全性を顧みない早まったものだと進言していたにもかかわらず、最終的には振り切られたことになる。

そもそもアルトマンは、Yコンビネーターというシリコンバレーでよく知られるスタートアップ育成、投資会社のトップを長年務めていた人物だ。いかに短時間にバカ売れする製品を作るかに注力してきたわけで、NPO的な価値観との間にはどうしても溝がある。開発が進むにつれ、社内での分断はますます深くなっていったようで、そのために同社を去る社員も少なくなかった。

さて、4人のボードメンバーのうち創設当時の価値を頑なに守ってアルトマンの解雇を決めた3人のメンバーは、ともに「効果的利他主義(effective altruism)」という信条や、それに基づいて活動する組織とつながりを持っていた。

効果的利他主義とは、「どうすれば最大限他者のためになるかを、エビデンスと論理を基に考える」という社会運動で、2000年代初頭に始まり社会貢献や寄付の行動へつなげられてきた。

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