OpenAI騒動が示す「人類がAIと戦っている」現実 効果的利他主義者が去った後、何が起こるのか

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もともとOpenAIは、AIの次に来る「AGI(artificial general intelligence=汎用人工知能)」を標榜していた。現在のAIはChatGPTにしても多くのデータを学習し、統計学的な手法で回答を導き出す。人間のようにも感じられるが、人間がプロンプトを出さないと起動せず、物理世界に接することもない。

他方AGIは人間と同等、あるいはそれ以上の知性を持ち、独立して思考し判断する。場合によってはロボットの手を動かして、何らかのボタンを勝手に押してしまうこともできるだろう。

現実味を帯びてきたAGIとASI構想

数年前までAGIはマイナーな研究分野で、学会も変わり者が集まるような場所だった。だが、生成AIが関係者たち自身も不意を突かれるような突然の進化を見せたことで、AGIやASI(artificial superintelligence=人工超知能)がにわかに現実味を帯びてきた。OpenAIも、生成AIの向こうにAGI開発のロードマップを描いているはずだ。

折しもアルトマンCEOは、投票権を持たないオブザーバーとして、マイクロソフトの理事会参加を認めようとしていると伝えられる。CEO追放劇にいたる前に、マイクロソフトが製品化に圧力をかけていたことも報じられている。今後、安全性よりもビジネスにはっきりと重心が移ることも予想されよう。

人類に危害を加えないAIは本当に実現され得るのか。現在のOpenAIの状況を見る限り、とても楽観的にはなれないというところだろう。アメリカや欧州連合(EU)でのAI規制の動きも、開発の速度に追いつききれずにいるように見受けられる。AIと人類との競争はすでに始まっているのだ。

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瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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