ガラッと変わった「ミシュラン東京」を読み解く 新設された「セレクテッド」部門、その意味は?

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ミシュランは2023年3月から「お薦め店をいち早く紹介するため」、公式サイトで「お薦め店」の先行公開を始めた。ミシュランが特定の店を「お薦め」する前例はこれまでなく、この先行公開が結果的にどのような評価になるのか、すなわち星がつくかどうかに注目が集まっていた。

結果として、70軒紹介されたなかで星を獲得したのは17%(12軒)、ビブグルマン3%(2軒)、残り80%(56軒)はすべてセレクテッドで、星はとても「狭き門」だった。ミシュランガイドへの掲載に喜びの声が上がる一方、一部では星獲得を半ば確信していた店を落胆させた。

ビブグルマンの軒数が半減した理由

なお、ビブグルマンは、星とは別にカジュアルなレストランに与えられる評価で、「価格以上の満足感が得られる料理」と記されている。

ビブグルマンは毎年30~40軒程度店舗の入れ替えがあり、価格以上の満足感のほかに、話題性のある旬の店がいち早く取り上げられる傾向にあったが、軒数自体がこれほど変動したのはここ数年なかった。

ビブグルマンの評価を受ける対象はこれまで「6000円以下で楽しめる店」が条件となっていた(2023年版から価格表示がなくなった)。

ミシュランがビブグルマンの評価をする際に、最近までこの価格の線引きはかなり厳密に守られていたようで、あるビブグルマンの店では、ミシュランがこの価格設定をしているからという理由で、6000円以下のコースをあえてメニューに残していたほどだ。

そして、ビブグルマンの店が半減した理由のひとつとして、レストランの形態としてカジュアル店と高級店に二分化できない、中間価格帯の店が増えたことがあげられるかもしれない。価格1万~1万5000円前後、カジュアルな設えで個性的な料理。今回設定された「セレクテッドレストラン」の中にも、そのような店が多く含まれている。

星とビブグルマンの中間のようなスタイルの多様化。星とビブグルマンはどちらが上下ではなく別のカテゴリーであるならば、「セレクテッドレストラン」は、それら両方の店を、またその両方に当てはまりにくい店を顕彰する受け皿として機能しているようにも感じられる。

今年、星付きとビブグルマンの両方から「セレクテッド」に移行していることからもそれは読み取れる。

「セレクテッドレストラン」がこれまでの「ミシュランプレート」と同じものだとすれば、ミシュランを刊行しているほぼすべての国で「セレクテッドレストラン」に対応する店の評価がすでにあったので、設定のなかった東京は実はレアケースだった。

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