ガラッと変わった「ミシュラン東京」を読み解く 新設された「セレクテッド」部門、その意味は?

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2007年に初めてミシュランガイド東京が刊行されたとき、掲載店がすべて星付き(他国のような「アシェット」、星なしという評価の店がない)という結果が世界中に驚きをもって受け止められた。

それはすなわち東京に星のレベルの店がそれほどまでに多いという証左でもあったのだが、刊行から17年を数え、飲食店の多い東京でも調査がより広く深く行えて、他国のような「セレクテッドレストラン」(星なし)の評価ができるようになった、と読み解くこともできる。

ミシュラン、パリの評価と比較すると…

そのほかに、この「セレクテッドレストラン」を設定することでミシュランガイド東京がどこを目指そうとしているのかの仮説として、ここで一つのデータをご紹介したい。ミシュランガイド本家フランスの中でも、パリ(パリ郊外を含む)に限った現在の星の数だ。

現在は、世界中のミシュランガイドの最新の掲載店舗がミシュラン公式サイトやスマホアプリで検索できるようになっており、この軒数が即時に出せるのも公式サイトのおかげである。

この軒数を見ると、2024年の東京は、2023年に比べて規模も評価の軒数もパリのそれに近くなってきている。

ミシュラン東京は当初より「世界で最も多くの星が輝く都市」というキャッチフレーズが掲げられ続けていて、それは今年も変わらない。

刊行されて17年が経ち、星付きやビブグルマンの軒数を大幅に減らす一方でセレクテッドレストランを設定し全体の軒数を大幅に増やすことで、時代に合わせて東京の料理の評価の総体としての規模を変えていこうとしているように感じられる。「セレクテッド」は生まれるべくして生まれたのだ。

ミシュランガイドは世界同一の評価基準を用いているとされ、ミシュランの評価が相対評価でなく絶対評価であるならば、軒数イコールその国の美食のレベルとみなすことができる。

しかし都市の規模や飲食店全体の軒数、また書籍として刊行する場合は書籍として形をなすかどうかなどの事情が星にまったく影響を与えないかというと、必ずしもそうとも言い切れないのではないか。

とくに、先日発表された他国のミシュランガイドの今年の評価を見るとどうだろうか。タイや台湾で今年新二つ星や新三つ星に昇格した店に筆者も2022年、2023年に訪れていて、ふりかえって東京の一つ星がそれらに及ばないかというと、決してそうは感じられなかったことから、今年の東京の評価は大変厳しいという感覚を持った。

その厳しさはすなわち、東京の中間~高級店の価格帯の飲食店の、極端なほどの多さとレベルの高さを表している。

「世界で最も多くの星が輝く都市」という東京へのミシュランガイドの評価は、おそらく今後も変わることはないだろうと思われるものの、評価の変化のスピードは時代に合わせてかなり速くなっているといえるのではないだろうか。

星野 うずら レストランジャーナリスト

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ほしの うずら / Uzura Hoshino

出版社勤務のかたわら、アジアやヨーロッパなど海外のレストランを訪問。個人サイト「モダスパ+plus」やTwitter(@caille2006)で、「ミシュラン」「ゴ・エ・ミヨ」などガイドブックの解説記事やレストラン評を執筆。飲食専門のポータルサイトでシェフインタビュー連載中(飲食店.com)。Instagram(@photo_cuisinier)では、飲食に携わる人のポートレートを撮影している。
 

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