《日本激震!私の提言》被災4地域ごとに個性、地元ニーズ理解し再建を--藻谷浩介・日本政策投資銀行参事役


 遠洋漁業のマグロ、カツオもあるが、親潮と黒潮がぶつかるため、イワシ、サンマなどもたくさん取れる。香港の高級中華料理店で最も珍重されるのが気仙沼のフカヒレだ。また、北上高地はほとんどが広葉樹林でその大量の栄養が海に流れ込み、切れ込んだ湾内は、カキ、アワビ、ホタテ、ウニ、ワカメなど高級食材養殖のメッカとなっていた。

現在は壊滅状態だが、世界中の高級中華料理店やすし屋に向けて売り上げが立つのだから、必ず再生へ向けた投資はできる。

もちろん海中のがれき処理は時間を要し、漁船の修理も水産加工設備の再建も必要だ。原発からは離れているが、当面は海外での風評被害もある。何年間かの休業の間に、廃業する高齢の漁民も多いだろう。その間の生活保障措置は講ずるとして、熟年者や若者が少数精鋭で従事する産業への転換は避けられない。原状復帰ではなく、漁港施設や水産加工設備などは、この際一気に集約化し合理化することが求められる。

復活の際には、高度なブランディングを行い、高価格販売を維持することが重要だ。今回、甚大な被害を受けたが、福島県の相馬漁業協同組合はヒラメ、カレイ、金目ダイなど近海ものの高級魚の直販ルートを開拓して漁師の手取りを増やし、後継者のできる漁業を実践していた。こういう方式を三陸全体に普及させるよい機会だ。

海岸平野でも、換地で自治体が海岸部に入手した土地を大規模農地とし、収益性の高い近郊農業を合理的に行うチャンスだ。三陸の水産も海岸平野の農業も、地元民出資で街づくり会社を設立し、土地をそこに賃貸して一括運営させることが有効だろう。

東京などには、地方は生産性が低いと決め付けている人がいる。だが交通が不便で大消費地から遠い三陸の場合、輸送費用をカバーできる産業しか残っていないので、実際は生産性が高い。新日本製鉄釜石や太平洋セメントの大船渡に代表される製造業でも少数精鋭のハイテク工場が多い。だがその分、維持できる雇用は少なく、人口減少はもともと激しかった。今後もその傾向は止められないだろうが、人口減少=産業衰退ではないことに、注意せねばならない。

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