《日本激震!私の提言》被災4地域ごとに個性、地元ニーズ理解し再建を--藻谷浩介・日本政策投資銀行参事役


“カラミティプルーフ”先進地として東北復興

--東北の製造業、サービス業などの復興はどう考えるか。

津波被害、原発問題は極めて重大だが、強震に見舞われた内陸部で人命の損害が極めて少なかったということにも注目してほしい。揺れで学校が倒壊したという例は一つもない。ビルの倒壊も少なく、大規模な火災が起きていない。阪神・淡路大震災の教訓を生かし、建物の耐震化を進めてきた地域だからだ。

仙台市は「カラミティプルーフ」の都市と呼んでもいい。免震構造のビルになぞらえれば、“免災”構造の都市とでもいう意味だ。もともと、伊達正宗が安全な台地を選んで合理的な都市計画を施した街でもある。仙台だけではない。栗原市では震度7でも死者を出していない。

--むしろ東京の本社を東北に移したほうがいい?

東京、大阪には、いまだに1982年の耐震基準改定前の木造建築が密集している地区がある。それに都心部はもともと低湿地だ。安全な地域への拠点分散は合理的と考える。

これからの日本が目指すべきは、仙台のようなカラミティプルーフ化だ。何度大災害に見舞われても人的損害がなく、いろいろなバックアップがあって、迅速に復興する国ということだ。今まで災害に襲われたことがない地域よりも、ずっと災害に強い国。東北地方は、カラミティプルーフであることが証明された先進地域になっていけるだろう。

だが、いくらカラミティプルーフを掲げても、そんなに天災の多い日本が国際社会で生き残っていけるのか、という疑問が出るかもしれない。ではスイスはどうだろう。大規模な山崩れから逃れられない国だが、迅速な災害対応が徹底しており、むしろ安心安全の国というブランドを確立している。

秩序立って前向きに努力する東北人の姿は、世界に感銘を与えている。天災が磨いた国民性が、日本ブランドを強化しているのだ。これから東北は、日本でいちばん天災に強い地域になってよみがえるはずだ。

もたに・こうすけ
1964年生まれ。88年 東京大学法学部卒、日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)入行。コロンビア大学でMBA取得。平成合併前の約3200市町村の99.9%、海外59カ国を回り、現地取材とデータに基づき分析。2010年発行の『デフレの正体』は50万部のベストセラーに。東日本大震災復興構想会議検討部会専門委員。

(週刊東洋経済2011年5月14日号掲載 記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

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